本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

「ふくしま応援企業ネットワーク」設立総会

 

 先日、福島復興推進企業連絡協議会(仮称)なる団体が旗揚げするというニュースをこのブログでもお伝えした。その設立総会が本日東電本社で開かれたので取材に行ってみた。


 まさか、311以前に原発推進PRに血道をあげていた福島県原子力広報協会のような団体が形を変えて出てくるのかと思ったのだが、取り敢えずそれは杞憂のようだ。
電気新聞の記事では、「福島県内の風評被害払拭のために活動する」と勇ましいことが書いてあったので緊張したのだが、今日の段階での実態は、ただのサポーター連絡会に近い感じだった。

 参加企業は以下の11社。全て廃炉作業に関係している企業ばかりだ。


鹿島建設
・関電工
清水建設
大成建設
竹中工務店
東電
東芝
日立製作所
富士電機
三菱重工
三菱電機

原発ムラの住人が揃いもそろった感じだが、当面の活動は、


福島県産品の購入促進(社員食堂の食材利用、社内バザー等)
・参加企業内での福島県内の観光促進
福島県産品の安全性についての理解促進
・各企業が実施している活動事例の紹介と共有

ということで、まずは参加企業内での活動を共有していこうということ。
ちなみに東電は事故後約42億円の福島県産品を購入したとのことだが、
この団体でどれほどの県産品を購入しようという数値目標の設定はない。
そこは様々なメディアが質問していたが、数値目標を設定すると、それを達成しなかった時のマイナスイメージを避けたいという考えがあったらしい。


で、事前に告知されていた「福島復興推進企業連絡協議会」という勇ましい名称は、「ふくしま応援企業ネットワーク」という少々可愛らしい名前に変わった。 少しでもソフトな印象にしようということかなのだろうか。

 

 発表された会の年会費は3万円なので、これで何か対外的な風評被害払拭キャンペーンが出来るとは思えない。また、とにかく何をするかもまだ手探りの状態で、数値目標もない。まだしばらくは「風評被害を払拭」するというよりも、とりあえず会員企業の社員に福島県産品を購入させるための会、ということのようだ。しかし、これがいつおかしな行動を取り始めるかは分からないから、引き続きウオッチしていこうと思う。 

 

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                        挨拶する東電・廣瀬社長

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                        集まった原発ムラの方々

「原発広告と同じような広告」とは何か?

 

  先日「原発広告」を推薦していただいた、一月万冊の清水さんが、今度は新著の方を取り上げてくださったので、感謝の気持ちを込めてこちらにアップします。

 

    何と有難いことに二回も続けてアップしていただいたのだが、その二度目の方で清水さんが非常に鋭い指摘をしておられる。

   「この原発広告と似た広告はないか、考えることがとても重要。原発事故が起きて原発広告は全部嘘だったことがバレたから良かったが、世の中には他にも似たようなもの(広告)があるのではないか?」

 

   仰る通り。もちろん、似たようなものは他にもたくさんある。私は「電通原発報道」からずっと書いているのだが、年間広告費を100億円以上使うような企業の広告目的は、実は表と裏の二通りがある。

 

  先ず表の目的は、当然ながらその企業のブランドイメージを高めることであり、自社製品の販促のためだ。絶えず購買層に向かって働きかけるのはブランドイメージ構築の基本であり、企業ブランドや商品名、商品イメージが悪くなったり薄くなったりすると、他社製品に置き換えられることになっていく。だからコンシュマー製品を扱っている企業は、ある一定額の広告費をかけ続けなければならない。これはまあ誰にでも分かる理屈だろう。

 

   問題なのは「裏の目的」の方で、これは多額の広告出稿でメディアの自粛を誘い、ネガティブ情報を流させないようにすることだ。 原発広告がその最たる例で、例えば東電の場合、関東ローカル企業にも関わらず、1989年から年間広告費が200億円を下回ったことが一度もなかった。例えば、ローカルで広告量が多いのは地方銀行だが、それでもせいぜい年間4〜5億円だ。それに比べれば、いかに異常な金額であるかすぐに分かる。

 

 ただしこの裏の目的は、最初からメディアの抱き込みを狙ってそうしているのではなく、巨額の広告費が結果的にメディア側の勝手な自粛を招いた結果である。例えば讀賣や朝日などの大手新聞社でも、特定の企業から年間10億、20億の広告出稿を受けていたりするすると、いきなりその企業のダメージになるようなスクープ記事は掲載されにくい。それが年間数十億円のパナソニックトヨタ都市銀行、生保などの超優良広告主となれば、なおさらである。つまり、相手が大きければ大きい程、メディア側の自主規制は強くなるのだ。だからメディアのニュースに触れる際は、そうしたフィルターがかかっていることを頭に置いて接しなければならない。

 

   そこで拙著「原発広告」シリーズは、簡単に言えば「メディア側の節操の無さと、自主規制の記録」という側面を持っている。大手新聞社や地方ローカル紙、大手週刊誌などがこぞって原発毒饅頭を食っていたことを包み隠さず掲載しているため、自らの汚点を隠したいメディアは決して書評欄などで取り上げようとはしない。さらにもう一つ、清水さんのような疑問を持つ読者が増えたら困るから、絶対に拙著を紹介したくないのだ。いやはや本当にケツの穴の小さい事よ。

 

       


原発広告と地方紙 本間龍さん著 感想 - YouTube

 


原発広告と地方紙 本間龍さんを読んで次の原発と同じような広告はないか考える - YouTube

 

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

 

 

 

老醜が率いる「原子力国民会議」というトンデモ団体

 先日「福島復興推進企業連絡協議会(仮称)」という胡散臭そうな団体についてお知らせしたが、それを遙かに上回るレベルのトンデモ団体が今年の6月に誕生していた。

 その名も原子力国民会議

この古くさいセンスもひどいが、一体この「国民」って誰のことなのか?という疑問を感じつつ以下の設立目的を読むと、そのあまりのひどさに絶句する。

 

「安全確保を前提に原子力の平和利用を世界規模で展開する」ことの重要性に鑑み、我が国産業界及び関係各界と協力しながら 「原子力を国民の手に取り戻す」という目標の実現に努めるとともに、海外関連機関とも連携しながら、 世界のエネルギー問題と地球温暖化問題の解決に貢献する活動を展開し、そのため、 人々の原子力に対する理解の促進と原子力政策決定機関に対する要望を展開することを目的としています。

 

 世話人

有馬 朗人 (元文部大臣、元東京大学総長)  84歳
今井 敬  日本経団連名誉会長、新日鉄住金名誉会長) 85歳
葛西 敬之 JR東海名誉会長) 74歳
石原 進  (九州経済同友会代表委員、JR九州会長) 69歳
木元 教子 (元原子力委員会委員、評論家・ジャーナリスト) 82歳

原子力国民会議

 

 

 一見して明らかだが、この文章にはあの悲惨な福島第一原発事故に対する記述がない。さらに、世話人はいずれも昔からの熱心な原発推進論者だが、事故に対する反省も全くない。現在でも10数万人が故郷に帰れず、原発事故関連死亡者が1000人を超えているこの事態を一体どう認識しているのか。
 平均年齢78歳の、かつての原発推進論者が雁首を揃えているのだから、まずは自分たちが招いた原発事故の責任について、今も被害に苦しむ人々に対して言葉を尽くして詫びるのが人間としての最低の節度ではないか。
 今も続く原発事故の惨状については一切触れず、自らの責任についても全く黙して語らない。こういう人々が「国民会議」などと名乗ることに、激しい憤りを覚える。この人々は国民の代表者ではないし、逆に原発安全神話を流布させて事故の遠因を作った原発事故の戦犯である。こういう人々のことを普通は厚顔無恥という。
 朝日新聞の調査で、昨年実施されたエネルギー政策に関するパブコメに寄せられた国民の意見の9割が脱原発を求めるものだった。


脱原発の声9割超 パブコメ、基本計画に生かされず:朝日新聞デジタル

 
 もちろんパブコメに集まった意見が全てだとは思わないが、様々なメディアの世論調査でも、7割近くは脱原発を望む結果が出ている。つまり、民意は明らかに脱原発なのだ。
 その民意を全く無視して原子力を国民の手に取り戻す」などとは見当違いも甚だしい。彼ら原発ムラがやりたいのは、原子力を国民の手から取り戻し」かつてのように湯水のように電気料金と税金を使って安全幻想の夢に浸ることだ。そんな愚行を絶対に許してはならない。

 

世話人達が登場する原発広告を多数収載。

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

 

 

塩谷町への意見、7割が賛成

     <取材、お仕事のご相談はryu.homma62@gmail.comまでどうぞ>

 

 一昨日の塩谷町の件で、アワープラネットTVさんのサイトに非常に詳しい記事があったので、転載させて頂く。7日の意見表明以来、町役場には140件の意見が寄せられ、そのうち賛成は98件、反対は42件だったという。約7割が賛成だった訳だ。

 再度私の意見を述べるが、最終処分場建設に反対することは、決して地域エゴではない。汚染物質はその発生した場所に返しましょう、という極めて自然で当たり前な道理だ。それなのに、あろうことか国がその道理を無視した行為を行おうとするから、反発を食らうのだ。

 それにしてもこの栃木県の福田知事は、「指定廃棄物の放射性物質の濃度が下がったあとに掘り出して路盤対策に利用するな ど、跡地を活用する考えはないのか」などと訳の分からないことを言っている。地元の反対を少しでも和らげようという腹なのだろうが、放射性物質の濃度が下がるのはいつになるか全く分からないし、そもそも住民はこの施設建設そのものに反対しているのだから、何の解決策にもならない。鹿児島の知事といい、この福田知事といい、政府の腰巾着みたいな知事ばかりだ。

 それと福田知事は、『指定廃棄物に対する「正しい知識」の普及や啓発。風評被害対策な どをマスコミの広報やセミナーなどを通じて実施するよう求めた』とのことだが、これこそが本ブログで繰り返し言及している「安心プロパガンダ」の実施要請に他ならない。こういう声に対応するという理由で、また巨額の無駄なPR費が税金から捻出されていく。これは今後とも要注意だ。

(以下転載) 

 

 

放射性廃棄物の最終処分場〜国と地元で平行線 | OurPlanet-TV:特定非営利活動法人 アワープラネット・ティービー

東京電力福島第一原子力事故に伴う除染で発生した放射性物質のうち、1キログラムあたり8000ベクレルを超える「指定廃棄物」。この栃木県内の最終処分 場候補地とされた塩谷町が建設に反対している問題で9日、環境省は県内の市長と町長を集めた会議を開き、望月環境大臣は計画を見直し考えのないことを伝え た。これに対し、塩谷町は県ごとに指定廃棄物を処分するとの枠組みを定めた「放射性物質汚染対処特措法」そのものを見直し、福島県内で処理すべきだと主 張。議論は平行線をたどった。
 
議論は平行線
宇都宮市で開かれた会議には、望月環境大臣と栃木県の福田知事、県内のすべての市長と町長が出席した。望月環境大臣は冒頭、「候補地の選定をやり直すべき だという意見が出ているが、今日の会議で選定手法を再確認したい」と述べ、建設の前提となる詳細調査について、改めて理解を求めた。
  
これに対し、塩谷町の見形和久町長は、同会議の過去の議論について、「議論をしたことは間違いないが、我々が結論を出したことはない。」と政策決定のプロ セスを問題視。さらに、「放射性物質は長きにわたり集中処理が求められる。汚染を拡散するわけにはいかない。」述べ、原発事故の影響で長期にわたって居住 が困難であると見られる原発周辺の住民に十分な補償をした上で、その地域に最終処分場を設置するよう提案した。
 
東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って発生した放射性物質を含む指定廃棄物めぐり、国は2011年、「放射性物質汚染対処特措法」を定め、宮城、栃 木、群馬、千葉、茨城の5県は、それぞれ県内に最終処分を建設し、発生した廃棄物を焼却・処分する方針となっている。このうち栃木県では、過去5回、環境 省が市町長らを集めた会合を開催して、処分場候補地の選定方法を固め、今年7月30日、塩谷町が指名されたが、町は詳細調査を拒んでいる。またすでに3カ 所の候補地が挙げられている宮城県でも、加美町が詳細調査を拒否しており、県内では福島県内での処分を求める声が高まっている。
 
放射性物質の処分めぐり隔たり埋まらず
望月環境大臣は、「原発事故で大きな被害が出た福島県にこれ以上の負担を強いることは到底理解が得られない」と国の方針に変わりがないことを強調。これに 対し、福田知事は、各県で処理することを示した特措法を見直さないとする国の考えを容認。指定廃棄物に対する「正しい知識」の普及や啓発。風評被害対策な どをマスコミの広報やセミナーなどを通じて実施するよう求めた。さらに「指定廃棄物の放射性物質の濃度が下がったあとに掘り出して路盤対策に利用するな ど、跡地を活用する考えはないのか」と問うと、望月環境大臣は「しっかり検討したい」と応じた。国は、栃木県で処理する指定廃棄物が全て8000ベクレル 以下となるのは130年後と回答している。
 
会議の終了後の記者会見で、塩谷町の見形和久町長は「受け入れるという気持ちが私にはない。」と改めて表明。塩谷町の反対同盟に参加する住民とともに「国 の基本方針を見直してくれという運動を今後も続けていく」と述べた。また同日午後に、富岡町の町議会議員と意見交換したことを明らかにし、今後、福島第一 原発周辺の視察などもしたいとの考えを示した。
 
撤回求め町民600人がデモ
会議に先立ち、最終処分場の候補地となっている塩谷町の住民が、候補地の撤回を訴えるデモ行進を行った。呼びかけたのは「塩谷町民指定廃棄物最終処分場反 対同盟会」。15台のバスで駆けつけた住民ら600人が、頭に赤いはちまきを締め、のぼりやプラカードを掲げて「処分場はいらない」「山に埋めるな放射 能」「環境省は環境を守れ」などとシュプレヒコールを上げた。参加した塩谷町の岩間綾子さんは、「美しい緑に囲まれて、水が豊かな町です」と憤った。ま た、米農家の野田勲さんは「なぜわざわざ山に持ってくるのか。絶対反対です。」と訴えた。
 
7日に塩谷町の見方町長が、福島県内での処分を名言してから10日の昼までに、塩谷町に寄せられた意見は全部で140件で、そのうち町長の意見に反対する ものが42件。町長の意見に賛同するものが98件にのぼった。福島県内からのものもあり、反対が15件、賛成が13件となっている。
 
塩谷見方町長の発言要旨(塩谷町
http://www.town.shioya.tochigi.jp/forms/info/info.aspx?info_id=35049
11月7日の見形町長の挨拶(塩谷町
http://www.town.shioya.tochigi.jp/div/soumu/pdf/shiteihaikibutsu/goaisat...
塩谷町が求めるもの(塩谷町
http://www.town.shioya.tochigi.jp/div/soumu/pdf/shiteihaikibutsu/shioya-...
 
放射性物質汚染廃棄物処理情報サイト(環境省
http://shiteihaiki.env.go.jp
栃木県における処分施設候補地の選定手法概要版(環境省
http://shiteihaiki.env.go.jp/initiatives_other/tochigi/pdf/tochigi_04_03...

川内原発再稼働の元凶は九州電力である

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 昨日は鹿児島県知事の川内原発再稼働合意がニュースになっていたが、知事や議会が再稼動合意を急ぐのは、もちろん九州電力九電)から強い要請が出ているからに他ならない。

 知事や自民党系の議員は完全に九電のポチであるから、そのいいなりになって事を進めているに過ぎない。言うまでもないことだが、九電こそがもっとも批判されなければならない相手なのだ。(以下は日刊ゲンダイ記事)


日刊ゲンダイ|「川内原発」再稼働を急ぐ鹿児島県知事と九電の“蜜月関係”

 

 九電は電力会社の中でも原発依存度が高く、とにかく早く再稼動したくてしょうがない。しかも電力10社で最大の赤字を出している。(表は朝日新聞より)

福島の事故から4年近くも原発依存から脱却できず、ただひたすらその再稼働を待っているだけの愚鈍な企業体質が巨額赤字を作り出したのだが、全くその反省が見られないから始末が悪い。

写真・図版

   

 それにしてもこの会社、体質が悪すぎる。多くの人はもう忘れているかも知れないが、2011年には悪名高いヤラセメール事件を引き起こし、世論の集中砲火を浴びた。


九電「やらせメール」に見た昭和の日本 日本的経営を改めて考えてみた(19):JBpress(日本ビジネスプレス)

 
 
   で、原発依存度が高い会社ほど、原発広告への依存度も高かった。会社の規模は東電や関電、東北電力には及ばないものの、原発広告には熱心で、様々なシリーズを作っていたのでいくつか紹介しよう。
 九電川内原発だけでなく、佐賀の玄海原発も持っていて、こちらでも結構広告を打っていた。中でも特筆すべきは映画監督の大林宣彦監督を起用した原子力発電、ちゃんと知りたい。ちゃんと考えたい。」シリーズで、佐賀新聞で約1年間、13回にわたって掲載された。
 この「人間の顔が見える原子力発電であって欲しい」というコピーは恐らく大林氏の願いだろうが、今回の川内原発再稼働問題のどこに「人間の顔」があったろうか。そこにはむき出しの企業エゴと地域エゴしか見えなかったのではないか。

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                          1997年6月 佐賀新聞

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                          1997年12月 佐賀新聞

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                       2009年6月 南日本新聞

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                       2009年6月 南日本新聞

 
 また、2009年の広告では「くらしを支えるエネルギー・原子力に関する情報を、九州電力は積極的に公開します」などと言っているが、今回の問題では市民からの公開討論会や説明会実施の要望を無視し、ひたすら逃げ回っているだけだ。
  上記のように、もっと原発を知ってほしい、もっと説明させて欲しいと広告で繰り返していた企業が、今回は一方的な説明会を数回催しただけで、しかも川内市内以外では圧倒的に反対が多い、つまりは多くの利用者が反対しているのを無視して再稼動に突き進んでいる。これこそが九電という企業の正体なのだ。
 
  そこには自分たちさえ儲かれば、利用者の願いなどどうでもいいという究極の顧客蔑視思想が存在している。利用者は完全に馬鹿にされているのだ。無理もない、他に選択肢がない県民は、九電から電気を購入するしかないからだ。
 しかし、安全に対する切なる願いを無視された県民はその振る舞いをちゃんと見ているから、このしっぺ返しは必ず来る。  今後この会社がどのツラ下げた広告を出してくるか、実に見ものである。   
 
※上記の広告は拙著にも掲載しています
原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

 

 

塩谷町「指定廃棄物 福島県内で処理すべき」は正論だ

    <取材、お仕事のご相談は ryu.homma62@gmail.comまでどうぞ>

 

 

 昨日、栃木県の放射性指定廃棄物の最終処分場候補になった塩谷町が、指定廃棄物はまとめて福島県内で処分するべきだと提案した。これは全くの正論であり、本来であれば国会で決めるべきことであると思う。

    しかし、国会では反対に福島県内(大熊町)に作る中間貯蔵施設から廃棄物を30年以内に福島県外で最終処分する、というバカげた法案が成立しようとしている。わざわざ建設費を1兆1千億円かける予定の貯蔵施設から、30年後に放射性廃棄物を他県に搬出せよという法案なのだが、当の福島県内でも空証文になると言われているシロモノだ。30年後にそんなばかげたことが可能になると思っている議員は恐らく一人もいないだろう。

 しかし、一刻も早く貯蔵施設を作りたい国は、空証文だろうが何だろうがどうでもいいのだ。そして与野党の議員も、揉めるのが面倒で誰も反対しない。30年後はどうせ自分たちはいないのだから、あとは野となれ山となれと思っている。まさしく後世にツケを先送りしているのであり、無責任極まりない態度なのだ。

   私は、各県に溜まった放射性廃棄物は、可能な限り福島の貯蔵施設に集めるべきだと考えている。そのためには、大熊町に作られるのは「中間貯蔵施設」ではなく「最終処分場」でなければならない。福島第一原発はどうせ廃炉になるのだから、その周辺は完全な廃炉と最終処分地帯にするべきなのだ。もちろん、そのために土地を失う人々にはきちんとした補償を行い、他の土地に移ってもらう。それが可能なのは、あの事故を起こしてしまった場所以外には考えられない。

   こういう話をすると、当の大熊町双葉町の人々からは当然反対の声があがる。そして原発は国策だった」「迷惑施設を東京に住む人々のためにやむなく引き受けたのに、なんだ」というような意見だ。しかし、それは残念ながら正しくない。

ここで昨日のNHKの記事を再録したので、見てみよう。

栃木 塩谷町「指定廃棄物 福島県内で処理すべき」

放射性物質を含む「指定廃棄物」の最終処分場の建設を巡り、栃木県内の候補地となっている塩谷町は指定廃棄物を福島県内でまとめて処理すべきだという提案をまとめました。

東 京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って発生した1キログラム当たり8000ベクレルを超える 放射性物質を含む「指定廃棄物」について、国は関東と東北の合わせて5つの県に最終処分場を建設する方針で、栃木県内では塩谷町国有地が候補地になって います。塩谷町では、近くの水源が汚染されるなどとして反対運動が起きていて、今回、町は指定廃棄物を各県で処理するという国の方針を見直し、福島県内で まとめて処理すべきだという提案をまとめました。この中では指定廃棄物を福島第一原発周辺の「帰還困難区域」にまとめて中間貯蔵を行い、最終的には原発の 敷地内で最終処分を行うよう求めています。
塩谷町は5日までに見形和久町長が県内すべての市と町を訪れて提案文を配り、理解を求めたということです。
見形町長はNHKの取材に対し、「ただ反対するのではなく、私たちの考えを示して理解してもらい、新しい局面を迎えたい。福島県には十分な補償を行い、指定廃棄物は拡散させずに処分するべきだ。環境省には基本方針を見直してほしい」と述べました。
国は、今月9日に宇都宮市で会合を開き、県内すべての自治体の長に対して、候補地選定の基準などについて改めて説明することにしています。

福島からは複雑な思いも

中間貯蔵施設の候補地となっている福島県大熊町の住民からは複雑な思いが聞かれました。
避 難先であるいわき市仮設住宅で自治 会長を務める吉田邦夫さん(66)は、「福島県から出たものだから福島県で始末をすべきということだろうが、原発事故は国策の結果なので大熊町民としては 気分はよくありません」と述べる一方で、「ひと言ではよしあしはいえない。栃木県の人たちの気持ちも分かるので、国がしっかりと受け止めてほしい」と話し てました。
また、76歳の男性は「住民が納得するような施設を作れば理解してもらえるのではないか。できれば施設の受け入れに協力してほしい」と話していました。
福島県中間貯蔵施設等対策室の星一室長は「国の方針では、廃棄物が出た都道府県で国が処理することとなっていて、これに基づいて、国の責任で確実に処理すべきだ。塩谷町の対応については直接、把握していないのでコメントは差し控えたい」と述べました。

(引用ここまで)

 

    想像通り、大熊町の自治会長が反対を表明している。しかし、そこには残念ながらごまかしがある。なぜなら大熊町こそ、原発の恩恵を最大限に受けた町だったからだ。事故が起きるまで、同町は福島県で一番所得水準が高い地域だった。また、様々なインフラが格安で使用できた。上下水道もただ同然の料金だった。その全てが原発による恩恵であり、町民は40年以上、それを享受していたのである。

 

 私は、拙著「原発広告と地方紙」を書くために、1960年代後半の原発立地決定当初からの福島民報福島民友の記事をかなり読んだ。そこには、過疎に悩む相双地区が発展することへの期待や、段々と豊かになっていく生活を喜ぶ記事が溢れていて、迷惑施設云々という発言はほとんど出てこないむしろ、もっともっと豊かになるために、さらに原発を誘致しようという声に溢れていた。その証拠になるような当時の記事をいくつか掲載しよう。 

 

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                          1970年10月 福島民友

 

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                         1981年10月 民報 

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                 1976年3月  民友

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                  1976年3月  民友

                         

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                          1980年8月 民友

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                           1986年9月 民友

大熊町、女川町(宮城)、大飯町(福井)の町長が「原発先進地」パネラーとして当時原発誘致を計画していた三重県紀勢町、石川県珠洲町、和歌山県日置川町の各 町長に原発誘致のメリットを説いている。ちなみに、「県内一誇る分配所得」「三法交付金フル活用」と誇らしげに発言しているのが当時の大熊町長、遠藤氏。

  

 いかがだろうか。

この他にも山のように同様の記事があるのだが、ただひたすら原発の恩恵を説き、原発があれば税金が入ってきてバラ色だと説く。そして実際に原発が立地していた大熊町双葉町はそうなった(もっとも、双葉町電源三法交付金の交付が終わると赤字財政になったが)。また、福島県全体も交付金の恩恵を受けた。

 もちろん、原発誘致の中心になった世代はすでにかなりの高齢者であり、若い世代には何ら責任がない。だからこそ、住めなくなってしまった賠償は国の責任できちんとすべきだ。そうした上で、元々原発があって、放射能に汚染されてもはや人が住むのに適さなくなった土地に、最終処分場を設置すべきなのだと考える

 今後、栃木県以外の各県でも最終処分場候補が決まってくるだろうが、どこもハイそうですかと受け入れるはずがない。その時は、この塩谷町の提案を一致団結して掲げ、県選出議員を動かし、国政的な問題として議論を拡げていくべきだ。

 

※上記の記事は拙著にも掲載しています

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

 

 

 

     

福島復興推進企業連絡協議会(仮称)とは何か?

     <取材・お仕事のご相談は ryu.homma62@gmail.comまでどうぞ>

 

 昨日も取り上げたが、福島県内の企業11社が集まり、「風評被害対策」を活動目標とする団体を旗揚げするのだという。11社の企業名はまだ明らかではないが、驚いたことに、なんと東電が入っているらしい。


福島の風評被害払拭へ、東電など11社で協議会-18日に設立総会(5面)-電気新聞-

 

 これは実に驚愕すべき事態だ。

いうまでもなく、東電は今回の福島第一原発事故を引き起こした当事者である。その当事者が、事故も収束していないというのに、県内の風評被害払拭に参加するというのは、一体どういう神経をしているのか。百歩譲っても東電を参加させるべきではない。

 双葉町の元町長井戸川さんが「福島で起きていることは風評ではなく実害だ」と仰っていた通り、福島、特に浜通地区の惨状は実害である。さらに、県内の各地にホットスポットがあり、放射線管理区域以上の危険な場所があることは、紛れもない事実だ。

 そうした「事実」に目をつぶり、さらには「全て風評だ」などと言うのは事実をねじ曲げた「隠蔽」である。そしてこの団体が「風評被害払拭」を目的に設立されるのなら、なるべく多くのことを「風評被害」に認定したがるのは目に見えている。そしてそれは、少しでも被害を矮小化して賠償から逃れたい東電の思惑と完全に一致する。そんな企業が参加する団体の活動など、一体どこに正統性があるというのか。

 

 かつて福島県には、原発推進のための「福島県原子力広報協会」と「福島原子力懇談会」という財団があった。311後は為す術もなく解散したが、それまで約40年間にわたって数多くの原発推進シンポジウムや説明会を実施し、新聞広告も掲載して県民を騙してきた。その代表例をお見せしよう。

 

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                     1986年10月25日 福島民友 

 

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                         1986年10月25日 民友

 

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                         1986年12月9日  民友

 

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                        1987年10月24日 民友

 

 「安全を見つめています」「地域の安全を守る」などと耳心地のいいことを言いながら、いざ事故が発生すると、彼らは県民の安全を全く守れなかった。元はと言えばこの財団法人の活動費も全て利用者の電気代だ。彼らはそれを自らの給料にし、飲み食いをして、挙げ句の果てに何ら責任をとっていないのだ

 

 そして、今回の「福島復興推進企業連絡協議会」の設立。何か上記の広報協会や懇談会と似た雰囲気を感じるのは私だけではないだろう。これらの広告の主題を「原発は安全」から「風評被害払拭」に変えれば、薄気味が悪いほど同じようなPR展開が可能となる。

 

 例えば3例目の、読者代表の主婦が原発を見て安全だ、と言う形式を、風評対策風にすると、「この目で確かめました・・・浜通の安全」「不安解消・・万全の風評被害監視体制」「ほとんどが風評被害であることを再認識」・・・

などという感じで、簡単にあらたな「安全神話」広告が出来てしまう。

そのようなことをさせないよう、これは今後厳しく監視していく必要があると思っている。

 

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢