本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

「原発プロパガンダを可視化する」ということ

  「原発広告」「原発広告と地方紙」執筆の狙いは何か、とよく聞かれます。幾つかあるのですが、その中でも最大の狙いは、「原発プロパガンダを可視化する」ということだと考えています。

      今までも、活字で原発広告や原発プロパガンダに言及した本は、幾つもありました。仮にも原発問題を追いかけている記者やライターの方なら、原発ムラの広告攻勢などは百も承知だったからです。

 しかし、一般読者の方は、それらに関する記事を読んでも、「ふ〜ん、そうなのか」と簡単に通り過ぎてしまいがちです。それは当然で、人は誰でも、視覚的要素がなければ記憶にとどめにくく、一つや二つの事例では、その問題の根深さが理解されない、という問題点がありました。

 ましてや、普段から広告や記事に関心を持っている層でなければ、実際の写真なしの記事のみでは、その内容を想像することは困難です。そういう一般の方たちに向けて、原発プロパガンダを「視覚化する」必要があると考えました。拙著では、そこを徹底的に検証することにしたのです。

 このブログやツイッターで何度も書いていますが、原発広告の実態を、実際に掲載された形で収録した書籍はほとんどなく、おそらく早川タダノリ氏の「原発ユートピア日本があるくらいです。そしてさらに地方紙の実態まで視覚化したのは、拙著だけでしょう。

   この方式ならば、とにかく論より証拠、掲載されている広告と記事を見ていただき、読者が自分でそれらを評価できます。原発プロパガンダの規模と怖さを如実に感じてもらうには、この方法が一番適切ではないかと思ったのです。

 

<非常にユニークな視点、超おすすめです!>

原発ユートピア日本

原発ユートピア日本

 

 

 

 

 

堀潤さんのJAM THE WORLDに出演決定!

9月26日(金)、JーWAVEのJAM THE WORLDへの出演が決定しました。同番組は月曜から金曜の毎日、時事問題を分かりやすく解説する骨太な内容で、私もよく聞いているので大変嬉しいです。昨年もちょうど同じ頃に前作「原発広告」発売の際に出演させていただきましたので、今回が2度目となります。

  前回同様、金曜のプレゼンターは堀潤さんです。ジーナリストとして何度も福島に行き、現地の状況を肌で知る方なので、新作の「福島県」の章をどう読んでいただけるか、今から大変楽しみです。

   私の本は原発ムラはもとより、過去に原発広告を掲載してプロパガンダに加担した主要メディアをも全く遠慮せず批判しているので、大手メディアで取り上げられたり、書籍紹介欄等で名前が上がることはまずありません。そんな中で番組に読んでいただけるのは、堀潤さんと番組プロデユーサーの勇気によるものです。お二人に深く感謝致しますと共に、リスナーの皆様に楽しく聞いていただけるよう、頑張ります。

 

原発広告と地方紙 (原発立地県の報道姿勢)

原発広告と地方紙 (原発立地県の報道姿勢)

 

 

 

 

 

「原発広告と地方紙」 制作裏話② 

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<今回の調査で集まった資料の山>

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<資料を見るグリーンピースジャパン 佐藤事務局長(左)と私>

 

 と言うわけで地方紙を調べようと思ったのですが、地方紙というのは北海道新聞などのブロック紙を除けば、朝日や讀賣のような縮刷版もなく、国会図書館でひたすらマイクロフィルムにあたらなければなりません。しかも、いつ原発広告と原発に関する記事が掲載されているかも分かりませんから、この辺りかと狙いをつけて、ひたすら目をこらして探していかなければならないので、途方もない労力と時間がかかります。これでは一体いつになったら本にまとめられるのだろう、と悩みました。

 

 そこで、昨年と今年、前著「原発広告」の発売記念でトークイベントをご一緒したグリーンピースジャパン(以下GP)の佐藤事務局長に相談したところ、GPの会員さんにボランティアで調査に加わってもらえばどうか、というお話をいただきました。まさに地獄に仏、本当に有難いお申し出でした。最終的に30名以上の方々にご協力いただいたのですが、それがなければこの本は完成していなかったので、本当に感謝しています。ちなみに、ボランティアの方々のお名前は謝辞と共に巻末に掲載させていただきました。

 

 こうして資料収集にかけた時間は約7ヶ月。ただ闇雲に調べてもらちがあきませんので、調査の仕方としては、各県の原発稼働の年とその前年が一番広告が出やすいだろうということで、全ての原発の稼働年・前年と、チェルノブイリ東海村JCO事故などの大きな事故年、それと福島県に関しては原発の竣工年も調べました。

 

 ですので、例えば福井や福島のように80年代までに主要原発が稼働し始めた所は、90年代はもうあまり調べていません。本当は全ての原発を時系列に調べていけば比較がし易いのですが、それはさらにとんでもない時間がかかるのでやりませんでした。それでも、86年(チェルノブイリ事故)や99年(JCO事故)、それに311直前の2009年と2010年はほとんどの県紙を調べています。

 

 そして前作と大きく異なる点は、今回は広告だけでなく、記事も調べて掲載したことです。「広告掲載量が多い新聞は原発翼賛記事が多いのではないか?」という仮説を確かめるためにも、この作業が必要だと考えました。特に70年代初頭の福島民報・民友の記事には、皆さんも相当驚かれるだろうと思います。

 

 こうして、延べ136年間分の地方紙を調べ、集まった約8500カットの中から厳選した406カットが掲載されているのが新著「原発広告と地方紙 原発立地県の報道姿勢」です。そのエッセンスを紹介した販促ツイまとめもご覧ください。


原発広告と地方紙(原発立地県の報道姿勢)販促ツイまとめ - Togetterまとめ

 

原発広告と地方紙 (原発立地県の報道姿勢)

原発広告と地方紙 (原発立地県の報道姿勢)

 

 

原発広告

原発広告

 

 

 

 

 

 

 

 

「原発広告と地方紙」 制作裏話①

  今回の作品は、原発所在地の地方紙の紙面を過去に遡って検証するという、なかなかありそうでなかった試みでした。ある一つの新聞にターゲットを絞ってその過去記事を調べるということは過去にもあったかもしれませんが、原発所在県13カ所の新聞を調べるというのは、恐らく過去に例がない試みだと思います。

  前作「原発広告」を執筆中、これだけ全国紙や雑誌に広告が出まくっていたのだから、地方紙もさぞやひどいことになっていたんだろうな、という予想はついていました。しかし、それはあくまで予想であって、具体的な掲載段数や掲載内容は一切分かりません。原発関係に詳しい人たちと話をしていても、「ああ、出てたよね」という話にはなっても、具体的にどこの新聞にどんな広告が載っていたのかまでは分かりませんでした。
 
   また、前作に掲載された広告群は全国紙で掲載されていたので比較的有名なものが多く、マイ・ニュースジャパンさんや、天野祐吉さんのサイトでも紹介されていたものが多数含まれていました。つまり、ネットで検索すれば探し出せるものも結構あったのです。しかし、地方紙に掲載された広告ははるかにマイナーであり、まったくと言って良いほどネットでは探せませんでした。つまり、本当の意味で「原点に当たる」しかない状況でした。
   
   現在、新聞や雑誌の「過去記事」については、各社や国会図書館にある検索システムである程度検索することが可能になっていますが、「広告」についてはほとんど探すことができません。縮刷版の巻末に索引が載っている場合はありますが、そもそも縮刷版がある地方紙は非常に限られていますから、結局は地道にマイクロフィルムを見て行くしか方法はないのです。逆に言えば、調査には圧倒的に手間暇がかかるからこそ、地方紙の報道姿勢や原発広告の掲載は、誰も調べていなかったのです。
   しかし、原発所在地の新聞が原発をどう報道していたのかは、報道機関が原発とどう対峙していたかを知る上で非常に重要なファクターです。だからこそ、これはきちんと調べなければいけないな、と考えました。(続く)
 
 

 


 

原発広告と地方紙、9月末発売!

冷温停止状態だったはてなホームページを再起動し、

このブログも始めることにしました!

新著「原発広告と地方紙 ー原発立地県の報道姿勢ー」が9月末発売決定!

前作「原発広告」は、主に全国紙(朝日・讀賣等)や雑誌に掲載された原発広告に焦点をあて、約250点の広告例を掲載。あわせて、原発広告の構造やその目的などを詳述しました。
今回はさらに踏み込み、原発立地県の地方紙がどのような原発広告を、どれだけの量を載せていたのか、そしてその新聞の原発に対する論調はどうだったのかを、過去40年に渡って調べています。


具体的には、
北海道 北海道新聞
青森県 東奥日報
新潟県 新潟日報
福島県 福島民報福島民友
福井県 福井新聞

以上5県を中心に、茨城県を除く全国13の原発立地県の地方紙を調べました。
前著と大きく異なる点は、広告だけでなく各紙の記事にも注目し、重要と思われる記事を掲載していることです。原発広告の多寡が記事にも影響を与えているのか、という視点で、特に原発の竣工時や稼動時、事故発生時の紙面をチェックしました。今でこそSNSで新聞の紙面が拡散されることは珍しくありませんが、70〜80年代の地方紙紙面を検証した著作は皆無であり、またそれらはネット上にも存在しないため、非常に貴重な資料となっていると思います。

 

13県の延べ130年間分以上の紙面を調べるのは個人では膨大な時間がかかりますので、今回は世界的環境NGOであるグリーンピース(GP)の日本支部に協力を仰ぎました。具体的には私の方から調査して欲しい媒体と年月日を伝え、それをGPが募集したボランティアさんに国会図書館で調査していただく手法をとりました。この調査に約半年以上を費やしています。

そうして集めた約8500ものカットの中から、最終的に400カットを厳選。細かなキャプションをつけ、さらに各新聞が一年に何段の広告を掲載したかも一覧にしました。
原発に対する各県地方紙の報道姿勢がどうであったのかは本書をお読みいただいてからのお楽しみですが、私が想像していた以上に各紙の違いがあり、非常に興味深いものになっています。是非、ご一読ください!

 

原発広告と地方紙 (原発立地県の報道姿勢)

原発広告と地方紙 (原発立地県の報道姿勢)

 

 

 

原発広告

原発広告

 

 

「原発広告」遂に発売!

9月14日のトークイベント「メーカー製造責任と原発広告」はおかげさまで盛況でした。
 事前予約は30人程度でしたが、50人以上の方が来場され、大変熱心に聞いていただきました。当日は25日発売の「原発広告」のエッセンスを投影してご説明したのですが、過去の広告を映し出す度に失笑やため息が漏れ、活発なご質問も寄せられました。

当日の模様は以下のページで見られます。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/101583
http://togetter.com/li/565460

そして遂に25日、小生7冊目の著書『原発広告』が発売となりました。
 この本では1974年から2011年まで展開された原発広告の数々を時系列で紹介しています。また、40年間を10年単位で四分割し、その広告手法の変遷も解説していますので、原発ムラがどんな狙いや目的で山のような広告を打っていたか理解出来るようになっています。
こちらで「はじめに」を読むことができます。
http://www.akizero.jp/archives/6971
 
 今まで多くのジャーナリストが原発広告について言及していましたが、その実態を一つにまとめた書物はなく、誰もが「そうだったんだろうな」と思いつつも都市伝説のような状況でした。

 しかし40年以上の長きに渡りあらゆるメディアに展開されていのに、そのアーカイブがどこにも存在していないというのはいかにも不自然です。広告業界には様々な業界誌や広告賞がありますが、そういう場所でも原発広告を振り返る試みはされてきませんでした。

 また、大手メディアの原発特集の中でもそういう試みはされていません。そこにはいくつかの隠された理由が存在します。それは主に、

⑴自分たちが原発ムラのPRに加担していた事実を今さら知られたくない

  ➡読者や視聴者からの批判が怖い

⑵実は巨大クライアントの言いなりだということがばれてしまう
➡ 権力者を見張る、弱者の味方という仮面が剥がれてしまう

⑶過去の広告掲載といえども、原発ムラや関連企業からの文句が怖い

➡ 例えば、東芝などの原発企業から抗議されるのを怖がっている


などですが、いずれも「広告費」に頼るメディアの宿命的体質なのだと言えるでしょう。
 
 しかしどこのメディアも検証しないまま、原発広告が忘却されてしまっては、またいつ同じようなプロパガンダがまかり通るか分かりません。
それゆえに、今回は主に新聞(全国紙)・雑誌(大手)を中心に250点以上の広告例を集めて掲載することとしました。是非とも多くの読者にご覧頂き、ご感想を頂きたいと考えております。

新刊記念トークイベントのお知らせ


またまた半年近く間があいてしまいました。ツイッターやFBでは
活発に発言しているのですが、執筆もしているのでブログまで手が
回らず、ついおろそかになってしまいました。そう考えると、
ツイッターもブログも執筆も同時にこなす人たちって本当に
すごいな、と尊敬してしまいます。


 今後はまたコンスタントに更新していきますが、併せてブログの
題名を「刑務所体験作家」から「光あるうちに光の中を歩め」に
変更致します。当初このブログは私の刑務所体験を伝える内容が
中心でしたが、最近は私の執筆の比重が原発問題に大きくシフト
している現状に鑑み、名称の変更をすることにしました。ただし、
今後も刑務所関連の執筆は続けていきますので、あくまでブログの
名称変更に過ぎません。


この間、今月末発売の新著『原発広告』を執筆していました。昨年上梓した「電通原発報道」で大手広告代理店「電通」や「博報堂」がメディアの報道姿勢に与える影響について解説したのですが、今回はそれを視覚的に証明するような内容になっています。

原発広告

原発広告


1970年代中盤から、自民党政府と原子力ムラ原子力発電を国策として推進するため、二人三脚で原発プロパガンダを邁進してきました。政府は通産省(現在の経済産業省)、文部科学省を中心に、原発ムラは東電を頂点とする各地の電力会社と電気事業連合会電事連)が中心となって、様々な原発推進広告を四媒体(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)にばら撒いて来ました。朝日新聞の調べで、その金額は40年間で2兆4千億円だったことが判明しています。そしてそれらを掲載し、莫大な広告料金を頂戴していたのが、皆様誰でもよくご存知の大手メディアだったのです。

しかし、その原発プロパガンダも311の東京電力福島第一原発事故発生で突然の終焉を迎えました。そしてあろうことか、その瞬間から原発ムラとメディアはその痕跡を消去することに躍起になり、それまで各々のHPに掲載していた広告を片っ端から消して行ったのです。自らの主張に自信と誇りがあるのなら、なぜそのような姑息なことをしなければならなかったのでしょうか。その行為こそが、彼ら自身が自らの過去を胡散臭く思っている証明になったのです。

今回の「原発広告」では、原発ムラが隠そうとしたそれら広告事例の数々を膨大な時間をかけて過去の新聞縮刷版やデータから調べあげ年代別に収録・解説し、さらに掲載された年月日、及び掲載したメディアの名前も出来るだけ掲載しました。こんなにも多くのメディアがこぞって原発ムラに尻尾を振っていたのかと、読者の皆様は必ず驚かれると思います。下は本書執筆途中の資料です。

さらにこの出版を記念して、今春から原発メーカーの製造責任を追求しているグリーンピースジャパンの佐藤事務局長と「史上最悪のプロパガンダ ーメーカー責任と原発広告」と題したトークイベントを開催します。当日は原発広告の数々をプロジェクターで映し出してその狙いと表現技法について解説し、確かに国をあげた「原発プロパガンダ」が稼働していたのだ、ということをご説明します。通常のトークイベントをよりも質疑応答時間を長くとり、ご来場の皆様のご質問にもお答えしますので、どうか振るってご参加下さい。
詳細は以下にて。
http://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/events/20130914/

【出演】
佐藤潤一グリーンピース・ジャパン事務局長)
【Guest】
本間龍(元博報堂・作家)

【日時】
9月14日(土) 16:45〜19:15(Open 16:15)

【料金】
1000円
グリーンピース・ジャパンのサポーターの方は無料です
サポーター予約:TEL 03-5338-9800 (佐藤たいしょう)
E-mail: sjp@greenpeace.org

【場所】
TKP 有楽町ビジネスセンター
東京都千代田区有楽町2-2-1
ラクチョウビル5階 カンファレンスルーム5A