本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

「罰金払えず労役」が激増中



 

 交通違反の罰金を払えず、懲役と同じような労役で支払っている人が増加しているらしい。以下今日の朝日新聞より。





 「罰金払わず労役」処分数、10年前の2倍超 08年度



 スピード違反などで罰金刑が確定したにもかかわらず、罰金を払わずに刑務所などで封筒ののりづけなどの労役を科される「労役場留置」処分となる人の割合が、全国で増えている。



 罰金刑の総件数は減少傾向にあるにもかかわらず、労役場留置件数は2008年度で7227件と10年前の2倍を超える。専門家は「罰金を払えない貧困層が増えている。厳罰化が加速すれば、処分者の増加は続く可能性がある」と指摘している。



 検察統計年報によると、全国の罰金刑は、交通事故や飲酒絡みの交通案件などが減り、02年度から7年連続で減少。08年度が45万2947件で、100万件を超えていた98年度の半分以下になった。



 一方、労役場留置処分の件数はここ数年、高止まりが続く。98年度は3172件だったが、03年度以降は7千件を超え、08年度の7227件は98年度の2.3倍になった。そのため、罰金刑総件数に占める労役場留置の割合は上昇傾向を続け、98年度の0.31%から08年度は1.59%に上がった。増加の理由について最高検は「数は把握しているが、分析はしていない」と説明している。



 佐賀県の場合、労役場留置の件数が09年度は12月末時点ですでに前年度を23件上回る65件で、3年ぶりに増加に転じた。栃木県では02年度から7年連続で100件を超えている。山梨県では、08年度は過去最多の50件を記録し、09年度は11月末時点ですでにそれを上回る61件に達したという。



 労役場留置件数の高止まり傾向について、中央大法学部の藤本哲也教授(犯罪学)は、判決から3年で時効を迎える罰金収納への対応が03年度から強化されたことを要因に挙げる。「督促しても払わなければ即留置の意識が強まった」とみる。高齢者の万引きの増加などを受け、窃盗罪などに50万円以下の罰金刑が06年5月から導入されたことも挙げる。



 立正大文学部の小宮信夫教授(犯罪社会学)は、02年6月と07年9月の道交法改正で、酒気帯び運転では罰金額の上限(50万円)が従来の10倍になるなど高額化された点や、貧困層の拡大で罰金を払えない人の増加を指摘。「生活が中断される懲役ではなく、罰金刑を最もふさわしいと選択した裁判所の判断がないがしろにされ、本来の姿からずれた状態。厳罰化が加速すれば、労役場留置の件数はさらに増えるだろう」と話している。(小川直樹)



  <労役場留置とは> 

 スピード違反や交通事故などの際の罰金や科料の未納者が郵便や電話などでの督促に応じない場合、地検は「収容状」を発布し、検察事務官が未納者宅に出向いて地検へ連行。それでも払わなければ、強制的に刑務所などに収監し、封筒ののりづけなどの軽作業をさせる。その作業を日額5千円程度に換算し、例えば罰金額が10万円なら20日間程度の労役となる。1日の換算額は判決で指定される。

転載ここまで)





 小宮教授が云っているとおり、そもそも罰金刑という規定は、懲役まではしなくても良いから罰金を納めるように、という考え方から設定されているはずだが、最近の厳罰化の風潮に乗って安易に罰金額を引き上げてしまったため、払えない者が続出するという本末転倒な状態が現出している。普通の人間に罰金500万円を支払え、と言われても、これは不可能な人も相当いるだろう。



 払えなければ労役と簡単にいうが、上記の通り1日5千円換算、20日間で10万円。しかし、勾留施設は週休2日だから、その間は仕事が出来ず、つまりは1ヶ月間入っていなければならない。10万円を返すために30日間の欠席を認めてくれる会社がどこにあるだろうか。



 もちろんこれは最低の仮定の話で、罰金が100万円ともなれば、単純計算で10ヶ月も入っていなければならなくなる。これではもはや「罰金」ではなく「懲役刑」と全く同じではないか。



 結局、あまりにも厳罰化が度を超すと、最初の想定からかけはなれた現実が生じて、一体何のためにその規定を作ったのか分からなくなってくる。罰金を払えない者は今後も着実に増加していくだろう。



 もちろん、罰金にせよ懲役にせよそういう状況に至った責任は自分自身にある。しかし、仮にも罰金で済むと法律が規定しているならば、その範囲内で運用するべきであって、それがいつの間にかまるで懲役刑に変質しているという状態はどうみてもおかしい。これは何らかの緩和策が必要なのではないだろうか。


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