本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

遂に「原発事故安心プロパガンダ」の本命が始動?

    <取材・お仕事のご相談はdesler62@gmail.comまでお気軽にどうぞ>

 

 

 遅かれ早かれこういう団体は出来ると予測はしていたが、遂に出てきた。以下、電気新聞記事から。


福島の風評被害払拭へ、東電など11社で協議会-18日に設立総会(5面)-電気新聞-

 

 東京電力など11社が参加し、福島県産品や観光の風評被害払拭に向けた活動の輪を広げ、活動の定着を図るため の「福島復興推進企業連絡協議会(仮称)」が発足することになった。18日、東京・内幸町の東電本店で設立総会を開く。各企業で取り組んでいる県産品の購 入促進や観光促進などの事例を参考にし合い、企業ネットワークとしてより継続的、組織的な諸活動を展開する

 

 国や原発ムラは、311以前の「原発安全神話」が311で崩壊したので、現在は事故による被害は大したことない、殆どは「風評被害」で「除染さえすれば安心」だという「心神話プロパガンダ」を推進している。

 

 かつての「原発安全神話」を推進していたのは電力会社と電事連だったが、福島において(全国の原発所在地も同様)その中核を担ったのは、東電などからの出向組で作られた「福島県原子力広報協会」や「原子力懇談会」などであった。これらの団体は東電からのカネで県内での原発説明会や懇談会、シンポジウムなどを実施し、福島民報や民友に広告を掲載していた。

f:id:gvstav:20141026155357j:plain

f:id:gvstav:20141106025105j:plain

 

 これらの原発推進団体は原発事故により自然消滅したのだが、新たな「原発心神話」流布のために、似たような集団が旗揚げしようとしている。それこそがこの福島復興推進企業連絡協議会(仮称)」と言うわけだ。

 

 一口に福島と言っても、非常に範囲が広い。原発被害の深刻な浜通は、県全体から見れば一部分に過ぎない。だから、福島県全体の復興と繁栄の為には、浜通地区の被害を出来るだけ過小評価し、実害もできる限り「風評被害」というレッテルを貼ってごまかしていくのが得策だ、というのが今の国と福島県のスタンスだ。そのために国は今までも様々な援護射撃を打ってきたのだが、遂に福島県内でその中核を担う団体が作られる。

 

 福島県内で経済活動を営み売り上げを増やそうとする企業及び団体にとって、原発事故に伴うイメージダウンは全て「風評被害」であって、なんとかしてそれを払拭したいと考えるのは当然だ。だから、イメージダウンになりそうなものには「風評被害だ」「復興を妨げる邪魔者だ」というレッテルを貼り徹底的に排除する。または「風評被害」により困っています、という同情を集めることによって自己正当化を図っていくというのが基本方針だ。一生懸命復興努力をしているのに風評被害で困っています、というのは俗耳に入りやすく、それこそが国と原発ムラの思うつぼである。

 

 しかし、福島で起きた人類史上最悪の原発事故と、それに伴う環境汚染、そして未だに10数万人が避難を余儀なくされている現状は決して「風評被害」などではなく、厳然たる「事実」である。その苛酷な現実に頬被りをして県産品や観光を売り出そうなど、県民の儚い願望を巧妙に利用した、国と原発ムラによる実に巧妙なプロパガンダであると言えよう。

 

 しかも、その中心には東電がいる。原発事故を引き起こした主犯である東電は、自らの賠償額が軽くなるのであれば、いくらでも適当な美辞麗句を並べ、「福島はもう安全です」と言うだろう。まさしく盗人猛々しいを地で行く行為ではないか。こんな極悪企業を復興の中心に置こうという神経が理解できない。

 それでももし福島県民がこんな団体を信用するのなら、さすがにいくらなんでもお人好しすぎる、と私は思う。この団体の主義主張にはこれからも注意し、過去の事例と照らし合わせながら、このブログで紹介していきたい。

 

 

 

福島復興推進企業連絡協議会(仮称)とは何か?

     <取材・お仕事のご相談は ryu.homma62@gmail.comまでどうぞ>

 

 昨日も取り上げたが、福島県内の企業11社が集まり、「風評被害対策」を活動目標とする団体を旗揚げするのだという。11社の企業名はまだ明らかではないが、驚いたことに、なんと東電が入っているらしい。


福島の風評被害払拭へ、東電など11社で協議会-18日に設立総会(5面)-電気新聞-

 

 これは実に驚愕すべき事態だ。

いうまでもなく、東電は今回の福島第一原発事故を引き起こした当事者である。その当事者が、事故も収束していないというのに、県内の風評被害払拭に参加するというのは、一体どういう神経をしているのか。百歩譲っても東電を参加させるべきではない。

 双葉町の元町長井戸川さんが「福島で起きていることは風評ではなく実害だ」と仰っていた通り、福島、特に浜通地区の惨状は実害である。さらに、県内の各地にホットスポットがあり、放射線管理区域以上の危険な場所があることは、紛れもない事実だ。

 そうした「事実」に目をつぶり、さらには「全て風評だ」などと言うのは事実をねじ曲げた「隠蔽」である。そしてこの団体が「風評被害払拭」を目的に設立されるのなら、なるべく多くのことを「風評被害」に認定したがるのは目に見えている。そしてそれは、少しでも被害を矮小化して賠償から逃れたい東電の思惑と完全に一致する。そんな企業が参加する団体の活動など、一体どこに正統性があるというのか。

 

 かつて福島県には、原発推進のための「福島県原子力広報協会」と「福島原子力懇談会」という財団があった。311後は為す術もなく解散したが、それまで約40年間にわたって数多くの原発推進シンポジウムや説明会を実施し、新聞広告も掲載して県民を騙してきた。その代表例をお見せしよう。

 

f:id:gvstav:20141106165908j:plain

                     1986年10月25日 福島民友 

 

f:id:gvstav:20141106165902j:plain

                         1986年10月25日 民友

 

f:id:gvstav:20141106165909j:plain

                         1986年12月9日  民友

 

f:id:gvstav:20141106170216j:plain

                        1987年10月24日 民友

 

 「安全を見つめています」「地域の安全を守る」などと耳心地のいいことを言いながら、いざ事故が発生すると、彼らは県民の安全を全く守れなかった。元はと言えばこの財団法人の活動費も全て利用者の電気代だ。彼らはそれを自らの給料にし、飲み食いをして、挙げ句の果てに何ら責任をとっていないのだ

 

 そして、今回の「福島復興推進企業連絡協議会」の設立。何か上記の広報協会や懇談会と似た雰囲気を感じるのは私だけではないだろう。これらの広告の主題を「原発は安全」から「風評被害払拭」に変えれば、薄気味が悪いほど同じようなPR展開が可能となる。

 

 例えば3例目の、読者代表の主婦が原発を見て安全だ、と言う形式を、風評対策風にすると、「この目で確かめました・・・浜通の安全」「不安解消・・万全の風評被害監視体制」「ほとんどが風評被害であることを再認識」・・・

などという感じで、簡単にあらたな「安全神話」広告が出来てしまう。

そのようなことをさせないよう、これは今後厳しく監視していく必要があると思っている。

 

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢

原発広告と地方紙――原発立地県の報道姿勢