本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

私の刑務所体験(1) 刑務所は受刑者が運営している!

 さてこのブログの根本、私の刑務所体験を少しづつ掲載していきたい。

私は昨年10月まで約一年間、栃木県那須塩原にある黒羽刑務所に服役していた。
ここは主に初犯と短期刑(だいたい懲役で5年程度まで、法律的には8年まで)の者が収容されている。関東圏では最大級の初犯刑務所で、有名人では田代まさし清水健太郎などもここに収容されていた。
 世の中の人々は、刑務所というともの凄い数の看守(今は刑務官と言います)が受刑者を24時間中見張っているとお思いだろうが、この行革の世の中、そんな贅沢はム所でも無理。現在2300人の受刑者を、約300人の刑務官が世話している。でもこの数は、経理やら総務やら現場以外の者も含めた総数なので、実際の現場で受刑者に相対している刑務官はもっと少ないのだ。
 黒羽刑務所には16の工場があり、小さい工場で70人、大きいところで150人程度の受刑者が毎日、様々な製品(木工品、ステンレス製品、紙製品、携帯や自動車の部品など)を造っているのだが、これを監視・監督する刑務官はなんと一つの工場に1人か2人しかいない。工場長と云われる刑務官が殆ど毎日、決まった工場で監督をしている。
 ところで100人にもなる受刑者の日常の世話は大変である。生き物だから毎日食事を与えて洗濯もしなくてはならず、一人一人の作業報奨金の計算もして、さらに個人が購入する物品の手配や差し入れの分配、と毎日大変な量の雑事が発生するのだが、これを行うのは実は刑務官ではなく、受刑者の中から選抜された「用務者」なのだ。
 用務者は主に金銭計算を行う「計算」、衛生面を担当する「衛生」、製品調達や工程調整を担当する「運搬」、工程指導やその他の雑役一切を担当する「指導補助」という役職に分かれている。大きな工場には総責任者という意味で「班長」という者もいる。大体一工場にこうした用務者が5〜6人いて、彼らが刑務官の補助として他受刑者の面倒をみているのだ。
 用務者も数年やっていると熟練してきて、若い刑務官などよりはよっぽどム所内のしきたりに通暁してくるので工場長にとって非常に重宝な存在となる。だから用務者が卒業(出所)する際にはその後任選びが大変大事な行事になってくるのだ。優秀な?受刑者を自分の工場に引っ張るために、各工場長はいつも水面下で人事担当とやりあっている。
 では雑用を用務者に任せて刑務官は何をしているかというと、当然のことであるがひたすら「監視」しているのである。100人もいれば必ず陰でコソコソ悪さをするヤツがいるので、とにかく目を光らせるのに忙しい。雑用などにかまっていられないのだ。だから実際の工場運営は、朝から晩まで用務者任せ。まさに、「刑務所は受刑者が運営している」のだ。
 もしこの用務者達が一斉にストライキでもすれば、黒羽刑務所はあっという間に麻痺してしまうだろう。1人か2人が脱獄するより、余程深刻な事態に陥ると想像されるが、さすがに用務者達は結構恵まれた待遇を受けているのでそんなことはしない。用務者であれば仮釈放に必要な刑務官からの判定も非常によくなるので、ひたすら「御用係」の仕事に邁進する。そして私はその16工場で「指導補助」の役職だった。(以下続く)

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