本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

出所者が再犯を犯さざるを得ないメカニズムとは

刑務所に戻りたいから再犯するのか」の続きを。



何故出所してすぐの者が再犯に走るのかといえば、答えは簡単。金が無く、稼ぐ手段もなく、雇ってくれるあてもなく、食うことも出来ず、雨露をしのぐ場所もないから。そんなバカなことはないだろ、何か手段があるだろう、と思われる方も多いだろうから具体的に述べてみよう。





 例えばあなたが今日、出所したとしよう。あなたは三年間、ム所暮らしで貯めた報奨金5万円以外は全くお金がない。既に両親はおらず、手をさしのべてくれる親類縁者も知り合いもいない。(実際にそういう境遇の者は満期出所者の半数以上を占めると云われている)行く場所がないので、職を探すまでの家代りにと更生保護施設に申し込んだがどこも過剰収容だと断られた。





 でもまずは出身地のハローワークに行って仕事を探す。相談したところ前科を登録してくれといわれて正直にしたところ、パソコンを叩いた若い職員は「残念ながら今ご要望に沿える職種はありませんね」と云った。





 次に市役所に行き、なにか受けられる援助はないかと尋ねると、「住民票はどこになってますか?」とまず聞かれる。住民票は3年間の間に抹消されているから今はない、住所不定だというと「住所不定の人は生活保護は受けられません」とくる。(これは地域によって差がある。熱心な自治体は何らかの手をさしのべる処もあるが、極めて少数派である)。





 次第に困ってしまい、なんとかならないかと市の社会福祉協議会に行く。生活困窮者に一時金(10万円)を貸す制度があるというのだ。しかし窓口のおばちゃんは云った。「保証人を立てて下さい。保証人がいなければお貸しできません」





 あちこち歩き回ってあなたは疲労困憊してしまった。住所不定だから携帯も契約できない(そもそもそんな金もない)。だから職探しも出来ない。公衆電話からかけた職場には、住所不定で携帯もないのでは、と断られてしまった。時間は刻々と過ぎ、一週間も経てば手元の金は殆どなくなる。もう野宿しかない。でも野宿したからと云って事態は好転しない。風邪をひいて熱があるようだが保険証もないから医者にもかかれない。一体どうすればいいのだ。のたれ死にや浮浪者狩りにあって死ぬのは嫌だ。死ぬよりは刑務所の方がマシかもしれない。でももう刑務所には戻りたくない・・・・でも明日、どう生きればいいのだ?





 上記は誇張ではなく、窓口でのいくつかの対応は私自身が体験したものだ。ようやく国も重い腰を上げて今月から「地域生活定着支援センター」なるものが全都道府県で稼働するようだが、ここで優先されるのは身体障害者と高齢者なので、健常者はまだまだあぶれるだろう。





 上記に書いたように、様々な福祉機関を回れるだけの余裕と知識がある者はまだどこかで救われる可能性があるが、大多数の出所者の殆どはそういう知識がなく、刑務所側もなんら教育をしない。ただ満期の翌日に放り出すことが殆どなのだ。出所者の中には手持ち金が1万円以下の者もいる。そういう者がどうするか、上記を読んで頂ければ自明であろう。







 前科を負ってしまった責任はもちろん自分にある。出所者は痛いほどそれを理解している。だからなんとか人に迷惑をかけず生きていこうと必死にあれこれやってみる。しかし、この強固な排除システムは、たとえていうならば両手両足を縛られたままで濁流を泳いで渡れ、と言われているのに等しい。年間3万人の出所者のうち、一体どれだけの者がその条件で向こう岸に渡れるだろうか。渡れない者は、「死ぬよりはましだから」刑務所に戻ることを選択するのだ。





決して決して「刑務所に戻りたいから」戻るのではない。「そこしか生きる場所がない」から仕方なく戻るのだ。

出所者にはまさに、生死の選択なのである。
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「懲役」を知っていますか?―有罪判決がもたらすもの

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