本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

刑務所で受刑者の心と体はどうなるか

 ところで、懲役を受けた受刑者の心と体が刑務所生活によってどうなるか、というのは体験した者にしか分からない。そのいくつかをご紹介しよう。

刑務所 (雑学3分間ビジュアル図解シリーズ)

刑務所 (雑学3分間ビジュアル図解シリーズ)

(1)声が出なくなる

 まず懲役の前段階、拘置所での体験。私は独居房(1人部屋)だったので、面会以外は殆ど人と会話しないで約6ヶ月を過ごしたが、そこでのどが枯れる、というか声が出なくなると言う症状を体験した。これは禁固刑の受刑者にもよくあるらしいのだが、人間の声帯は使わないと萎縮して声が出にくくなるらしい。面会に来た家族が驚いていたくらいだから、本当にかすれ声になってしまい、会話がしにくくなってしまった。拘置所の医者には原因不明と云われて放置されていたが、実は結構良くあることらしい。この症状はム所に入って人と会話できるようになった途端に治ってしまった。

(2)眠れなくなる→眠剤多用で中毒に

 最も多いのがこれ。拘置所もム所も21時就寝なので、早過ぎて眠れない。床についても様々なことを考えてしまい、心配で眠れないなど理由は様々だがとにかく夜眠れない、というもの。ム所などで夜寝ないで騒ぎ出すと周囲に悪影響を及ぼすので、不眠を訴える者には眠剤睡眠導入剤睡眠薬)が非常に簡単に与えられる。風邪をひいたので薬を出してくれ、と言ってもなかなか出してはくれないが、眠剤は非常に気前よく出してくれる。ところがこれも善し悪しで、使っているうちに体が薬に馴れてきてしまい、服用量が増加していくのだ。結果的に2年も3年も服用していると、もはや眠剤なしでは眠れない体になってしまう。なんのことはない、ム所で薬物中毒患者を製造しているようなものだ。私のいた工場でも、眠剤が効き過ぎて昼間も殆ど寝ている連中が随分いたが、夜中騒がれるよりはマシ、ということで放りっぱなしであった。そういう人は出所後も恐らく薬から離れられないのではないだろうか。

(3)服従癖がつく→自主性がなくなる

 長期の服役者に多いとされるのがこれ。ム所は行動が厳格に制限されており、全てが刑務官の命令で動いている。命令以外のことは一切してはならないし、勝手に動こうものなら直ぐに懲罰を喰らう。そのような状況下で長く過ごすと、命令されたこと以外は絶対にやらない癖が染みついてしまうため、いざ出所しても社会に適合できなくなっているのだ。誰かと会話しても自分から発言することはないし、ひどい例だと、ドアの前に立っても自分では開けず、誰かが開けてくれるのを待ってしまうという(ム所では、全てのドアを刑務官が開錠して開ける)。 また、常に誰かに見張られているような気がして神経質になりがちだとも云われている。

(4)足腰の筋肉が落ちる
 
 懲役というのは強制労働なのだが、ム所内の工場というのは結構狭く、自分の持ち場は決まっていて、一日中椅子に座ったまま、という者の方が多い。通勤に要する時間もほぼゼロ。一日40分間の運動時間があるが、雨になれば中止。このような状況で数ヶ月過ごすと、圧倒的な運動不足で足腰の筋肉が目立って落ちてくる。通常健常者で一日7〜8千歩歩くと云うが、受刑者は恐らくその三分の一も歩いていないだろう。私はその衰えを克服しようとフットサルや筋トレに精を出したが、それでも出所後暫くは足が痛かった。今でも足の筋肉は入所前のレベルには戻っていない。


(5)精神的・肉体的な復調には長期の時間がかかる(服役期間の2倍?)

 ある元刑務官の著書に、受刑者が入所前の体力を気力・体力を回復するには、服役していた期間の倍の時間がかかる、と書いてあった。私はム所にこそ一年弱だったが、その前の拘置所での勾留などを足すと2年のあいだ服役していたことになり、その刑務官の論法で云えば回復するには4年かかる、ということになる。

 その根拠がしめされていなかったのが残念だが、最近どうもそれはあながち間違ってはいないようだ、と感じるようになった。
私はわりと体力には自信があり、服役中もトレーニングを怠らなかったし、出所後もわりと順調に過ごしてきたかな、と思っていたのだが、6月以降2年ぶりの東京の湿気と暑さに完全にダウン。2度も発熱し、とにかくいつまでも疲れがとれない日々が続いた。もちろん普通の人でも日本の夏は辛いのだが、以前はこんなことは全くなかった。自分が気付かない奥底の部分で、体が変化してしまっているのかも知れない。これが直るのに4年もかかるのかと思うとため息がでてしまう。

 懲役を受けるのは自分のせいだから仕方がないが、その後遺症は出所後も長く続く。ひょっとすると一生続くのかも知れない。