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本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

被告席から裁判員制度はどう見えるのか?

 ついに裁判員制度による裁判が始まった。私は先日も書いたとおり、この制度の理念には共感するものの現行の制度設計には不備が多すぎると思うので、現段階では反対の立場だ。とりあえず理念についてどうこう云うのは他のサイトにお任せして、被告を体験した立場から裁判員制度がどう見えるかについて書いてみたい。
 単純に被告の立場から見れば、雛壇から9人もの人々(裁判官3名+裁判員6名)に見下ろされるのははっきり云って相当な心理的プレッシャーを感じるだろう。もちろん最初から全員が自分に敵対的な立場とは限らないが、裁判員は質問する権限があるから、矢継ぎ早に多くの裁判員から質問が繰り出されれば、それだけで被告にとってはプレッシャーと成りうる。的はずれな質問に答えなければならないことも、心理的な消耗を増加させる原因となるだろう。(昨日の裁判では質問が一つもなかったらしいが)
 また、事件の性質によって、例えば痴漢などの性的な要因が絡んでいる場合、女性裁判員が多数ならば当然判決が辛くなるのは容易に想像できるから、もし犯行を否認している立場だとかなりの恐怖感を感じるだろう。ちなみに昨日の裁判は裁判員6人中5人が女性だったということで、犯行内容(男性が隣人女性を刺殺した)からみて偏りすぎている、という批判が早速出ている。最後はPCで抽選するそうだが、どうみてもこの構成はおかしくないか。

ただ裁判員制度によって、初めて被告の便宜が図られた点も確かにあるので、以下列挙してみよう。

1)猿回し(腰縄)と手錠を、裁判員入廷前に外せるようになったこと
 洋画などをみると、凶悪犯以外の裁判では、被告はきちんとした身なりで手錠もせず座っていることが多い。日本の裁判では傍聴者の前に手錠・腰紐のままで引っ張り出され、裁判官が着席するまで完全にさらし者になっていた。裁判員の前で腰紐・手錠をつけたままでは印象を悪くするという理由で、彼らが入廷する直前に外されることになった。かなりの前進ではあるが、そもそも裁判員がいるいないに関わらず、刑の決まっていない者を審理する場に腰紐・手錠で入場させるという発想自体がおかしいのではないかと私は感じている。

2)衣服でネクタイ(首がしまらないもの)の着用が認められ、スリッパではなく靴(これもそう見えるだけだが)になったこと
 これまでは、逃亡・自殺防止のため衣服もジャージにスリッパなどだらしない格好にならざるを得なかった。これは被告本人の希望ではなくて、ネクタイ・ベルトの着用が禁止されていたため自然とラフな格好になってしまっていたのだ。「人は見た目が9割」という著書もあるとおり、ぼさぼさの頭でだぶだぶジャージ、素足にスリッパでは裁判員にに良い予断は与えないだろう、ということから多少は改善された。

3)弁護士が被告人の横に座れるようになったこと
 これも経験則だが、今までは検察側に反論しようとしても弁護人が後ろの席に座っており、体を後ろ向きにそらしてひそひそ話をしているようでかなりやりにくかった。弁護人が横にいることで意思の疎通がかなりスムーズになることは間違いない。

 等々、被告側からみて多少の改善があったことは間違いない。ただ最大の問題は、こうしたいわば小手先の部分が改善されたとはいえ、裁判員の都合を優先して裁判自体の日程を大幅に短縮していることにより、被告の「徹底的に争う権利」を剥奪しかねないことだ

 実は裁判とは被告に圧倒的に不利なモノだ。逮捕時点で社会的立場や職場を失い、保釈がなければ延々と拘束され、弁護士との打ち合わせも接見だけではままならない。長い間拘束されていると精神的にも参ってくる。被告が否認しているような殺人事件など、いくら公判前整理をするからといって4日や5日で裁けるようなものではあるまい。
 
 私が真に恐ろしいと思うのは、裁判員制度で「市民が参加するために」という錦の御旗のもとで審理期間を圧縮し、被告の「公正な裁判を受ける権利」を奪うことが正当化されることだ。裁判員を長時間拘束し続けるのは無理だ」から「裁判を短くする」ことは、裁判をいかにスムーズに処理するかというテクニカルな問題であり、「人を裁くために徹底的な審理を尽くす」という法の精神から別の次元にあるものだ。裁判員が早く帰りたがってるからさっさと多数決で決めようよ、などと評議室で語られているのを想像するだけでも、相当背筋が寒くなるではないか。

裁判員の都合を優先するあまり十分な審理を受けられなくなる」という疑念があるかぎり、被告を体験した立場からはこの制度を支持することはできないが、現行のプロ裁判官にも相当問題があることも周知の事実。その点はまた次項で取り上げたい。

 

裁判員制度の正体 (講談社現代新書)

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つぶせ!裁判員制度 (新潮新書)

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