検察が取り調べ録音を保管!?足利事件で新事実(追記あり)
足利事件で起訴されていた菅谷さんの取調べを録音したテープが検察に保管されているという驚愕のニュースが今朝の朝日一面に載っていた。
「足利事件と別の不起訴2事件 菅谷さんの取調べ録音 検察内にテープ保管」
と出ている。
この録音は92年から93年頃、足利事件とは別の、最終的に不起訴になった二つの幼児殺害事件の取調べ時になされたものらしく、足利事件の取調べとは別のものらしい。
しかし最終的に不起訴になったとはいえ警察はこの容疑で再逮捕までしている。その後処分保留から不起訴になったが、その際も最初は犯行を自供した(自供させられた?)後に否認に転じており、このテープはその当時の状況を録音したもので、10数本にのぼるとのことだ。
このテープの存在が明るみに出た衝撃度はすさまじいものだ。そのポテンシャルの意味を列挙してみよう。
1)一旦は犯行を自白したが後に否認に転ずる様子が収められている
→取調べ時の自白強要、誘導の過程がすべて明らかになってしまう。
2)取調べ録音の導入を頑なに否定している検察自らが取調べを長時間にわたって録音していた。
→他事件でも、実は同様の録音が大量にあるのでは?
3)まだ取り調べの録音が要求される遙か以前にこのような録音を(検察側が)あえて行った背景には、すでにこの頃菅谷さんの自供が一定しないことに検察が危機感を持った証拠である
→すでに始まっていた足利事件の公判時にも、その自供の信憑性が検察内部でも疑問視された可能性が高い
全く検察の二枚舌には驚き呆れる。ここ数年、冤罪が次々と暴かれたせいで高まってきた取り調べの可視化・録音実施に頑強に反対して来たのは自分たちではないか。圧倒的な国民の声に耳を貸さないかと思いきや、自分たちの都合で必要と思うところでは、なんと15年以上も前から取り調べを録音していたのだ。なんのことはない、日弁連などに云われずとも、録音の必要性を誰よりも理解しているのは検察の諸君らではないか。
中でも「どうやって嘘の自白までもっていったか」という取調べの闇が白日にさらされる可能性が強いのがとにかく凄い。検察にとっては悪夢であろうから、なんだかんだと言訳をして隠蔽しようとするに違いない。
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残念ながらこの録音は不起訴となった事件のものであるため当時の検事の責任追及までは出来ないが、無実の人間を徹底的に追い込んでいく過程が収録されており、冤罪を生む構造が克明に記録されているはずであり、菅谷さんの弁護団は絶対にこれらを開示させるべきだ。
それにしても、一面まで使ってこのニュースを掲載した朝日の検察に対する及び腰はどうだ。このような記録が10数年ぶりに出てきて、取調べの可視化・録音はますます不可避になったというのに、「見える取調べに影響か」などと気持ち悪いほど検察におもねった書き方で、気分が悪いことこの上ない。なにか検察に対する遠慮があるのではないか。
15年以上も前に検察は既に取り調べを録音していた。もちろん、当初は自供の信憑性をきちんと裏付けようとした狙いがあったはずだ。それが結果的に菅谷さんのこの件に対する無実を証明することになったのだが、要するにやはり録音・録画を残せば、それはまともな証拠になるということだ。検察がそれを望まないのは、それにより自らの杜撰さが(更に)白日の下にさらされるからである。ようするに己の保身が一番、正義は二番(あるいはそれ以下)ということなのか。
12日に補足記事あり。菅谷さん自身が再審でそのテープを聴きたいと語り、弁護団も
(1)別件の虚偽自白の様子は足利事件の「自白」の信用性判断に重要な影響を及ぼす
(2)別件の録音は足利事件の公判と同時期に行われたと指摘。「本件の類型証拠として開示義務がある」と主張。
とテープの公開を主張している。私が昨日感じた通りの発言だと思う。これに対し検察は開示拒否を貫く構え。これも予想通りだが、拒否すればするほどその見苦しさ故に検察への怒り、不信は高まっていくから、どちらにせよ検察にとって名誉挽回の妙手は全く無いのだ。
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