本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

富山事件 国家賠償請求訴訟始まる 自白強要は他人事といえる自信があるか

 http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2009082002000176.html
 
 富山で起きた強姦事件で、富山県警のでっちあげ捜査による冤罪で2年間を刑務所で過ごした柳原さんが、国家賠償を請求する訴訟が昨日から始まった。



 足利事件もひどいが、この富山事件の捜査のずさんさもまたすごい。犯行時刻に柳原さんが自宅に電話していた記録という強力なアリバイまであったのにこれを無視し、当初否認していた彼にあの手この手で自白を強要したのだから戦中の憲兵顔負けの所業である。



 柳原氏によれば、



・母親の遺影を持たされ、「お母さんは泣いているぞ」と云われた

・家族も(彼が)やったに違いないと云っているぞ、と刑事にいわれた。

・否認すると「バカ野郎」とどなられ、「二度と供述を変えません」という念書を取られた



 等々やりたい放題の圧迫を加え続け、氏は「逮捕後に父親も亡くなり、もう誰も助けてくれないと自暴自棄になって罪を認めてしまった」という。その結果、彼は全くの無実の罪で約2年間、富山刑務所懲役刑を受けたのだ。





 この事件はマスコミなどでも繰り返し報道されているので多くの方がご存じだろうが、同時に「無実の罪を、いくら強要されたからといってなんで認めてしまうのだろう?」「自分なら絶対に認めない」と感じている方が殆どだろうと思うし、そういう経験が全くない人がそう考えるのは全く自然でもある。



 しかし残念ながら、実際に警察の取り調べを体験した者からすれば、「条件が揃えば」誰でもその罠に落ちる可能性がある、と断言出来る。

取り調べの現場(特に殺人事件等の凶悪犯罪の場合)においては、しばしば人権蹂躙などが軽々と行われるからだ。

その条件とは、



・本人が気が弱い性格だと、徹底的にそこにつけ込まれる

・DNAなどの証拠があがったから逃げられない、と脅される

・休みナシの長時間(一日10時間以上)、延々と自白を強要され、絶望感と疲労感でボロボロにされる

・親兄弟などと接見できず、「家族もお前がやったと云っている」などと孤独感を煽られる

・実際に親兄弟などが面会に来ないで、更に孤独感が増す

国選弁護人などやる気のない弁護士あたってしまい、弁護士にさえ無実を信用してもらえず絶望する



 などである。これらが一時期に複合すると、どんな気の強い人間でも自暴自棄になってしまうことが有り得ると私は思う。



 一旦勾留されると瞬時に外との全ての連絡を遮断される。携帯やネットによって瞬時に連絡を取れることになれてしまった現代人にとって、この突然襲ってくる孤独感はまさに恐怖だ。



 今回ののりぴーのように、事前に周到に準備してから出頭する場合は別だが、突然逮捕されるととにかく深い孤独感と焦りに襲われる。取調中は面会をさせないことが多いし、重大事件の場合は「接見禁止=面会を許可しないこと」にする場合もあるから、外との連絡のたった一つの希望は弁護士だが、これも国選だといいかげんな輩が多くあてに出来ない場合が多い。



 誰にも相談できず、周囲は自白を強要する者のみ。取り調べが終わって部屋に戻っても、誰も庇ってくれる者はいない。翌朝はまた過酷な取り調べが続くだけ。そんな日が最大20日も続いたら、気が狂う者も出るだろう。そうなる前に、とにかくその地獄から抜け出したいと思って(正確に言うとそう論理的に考えるのではなく、とにかく疲労と恐怖から逃れたい一心で)自白してしまうのだ。なにせ誰も見ておらず、誰も助けてくれないのだから。



 例えば殺人を自白すると云っても、自分がやっていないことを調書に書けるわけがない、と皆さんは思うだろう。心配ご無用、優秀な警察官があなたに成り代わって調書を書いてくれるのだ。一度も行ったことが無い場所で、知りもしない相手に殺人を犯すなど、朝飯前である。そういう面でわが日本の警察には極めて優秀な劇作家が揃っている。そして一度認めて調書になったら最後、ベルトコンベアーに乗ったかのように裁判所有罪判決を連発してくれて、あなたを極悪非道の殺人犯に仕立て上げてくれる。



 昨日の法廷では、国と県は「違法な取り調べはなかった」と争う姿勢をみせた。ちなみにこの冤罪事件の取り調べ関係者で罰せられた者は一人もいないという。



 おいおい、違法な取り調べがなかったら、なんで柳原さんは冤罪になってしまったのよ?彼が勝手に罪を認めたんで、うちらも騙されてました、とでも云いたいのだろうか?本当にふざけている。裁判を通して徹底的に追及するべきだ。そして取り調べの可視化と録音を絶対に実施すべきだ。