累犯障害者を減らすために
ちょっと前の毎日新聞の記事から
『<知的障害者>出所後支援、大幅遅れ 施設整備4県のみ
8月8日2時30分配信 毎日新聞
国が全国で進める、刑務所を出所した知的障害者らの支援センターの整備が、大幅に遅れている。7月までに全都道府県で整備を終える目標だったが、昨年12月に整備主体が厚生労働省から都道府県に急きょ変わったことから、実現したのは静岡、山口両県のみ。その後も滋賀、長崎両県でできただけで、専門家からは早期整備を望む声が出ている。
整備を進めているのは「地域生活定着支援センター」で、今年度計画。出所者に障害者手帳発給や社会福祉施設への入所をあっせんする。運営は地元の福祉団体への委託などを予定。設置予算は国から全額補助される。
しかし、いったん予算計上する必要が生じるなど自治体側に混乱が生じ、補助金申請は9府県だけ。補助金申請している島根県は「変更は唐突で、矯正事業は国がやるべきだ」と不満を漏らす。
法務省の矯正統計年報によると、知的障害の疑いがある「知能指数70未満」の新規受刑者は約6700人(07年)。全体の約2割で、出所後に十分な支援が受けられず再犯に走ったケースが多いとみられている。【牧野宏美】』
またこういうなんの分析もしていない、官からもらった原稿を転載したような記事には本当に腹が立つ。設置予算が全額国から補助されるという、この大不況のさなか信じられない大盤振る舞いにもかかわらず申請が殆どないのはなぜなのか、を書かないとこの記事は意味をなさない。
新聞が口をつぐんでいる、施設設置が進まないわけはズバリ、地域住民の反対が強いことが予想されるため、地元行政が尻込みしているからだろう。あるいは既にそのようなことが起きているからだろう。
要するに火葬場やゴミ処理場建設予定地で起きる住民反対運動とまるっきり同じで、「迷惑施設はいらない!」ということだ。ましてや、100歩譲ってゴミ焼却場なら自らを含めて住民の役に立つが、出所者の支援施設など周辺住民には何の恩恵ももたらさない、ということなのだろう。こういう住民エゴは感情に走り易いので、行政がいくら説明しても説得できない。
しかし、この施設は長期滞在施設ではない。相談に来る知的障害者の殆どは非常におとなしい。犯罪を犯したといっても、万引き程度の微罪が主で、きちんとした働き口があれば社会復帰の可能性は非常に高く、働き口がないから再犯せざるを得ない者が殆どなのだ。要するに危険など無いわけで、そこを行政は丁寧に説明すべきだ。更に、社会に不安を与える再犯率を下げるためには、こうした施設がどうしても必要であることも懇切丁寧に説明すべきだと思う。
「必要性は分かるが俺の家の側は厭だ」と云ってばかりでは、行政は進まない。迷惑施設も社会の運営には必要なのであり、ある程度強制力が伴うのは仕方ないのではないか。累犯障害者の増加は社会にとって大きな損失になっている。こういう疎まれる仕事こそ、中央官庁が住民の恨みを買ってでも遂行すべきなのではないかと思う。そうでなければ、この支援センターの整備など100年たっても進まないだろう。。
- 作者: 山本譲司
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