大阪個室ビデオ放火事件公判 検事は敵なんですか?
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以下は先週のメルマガに少し変更を加えたものです。大阪個室ビデオ放火事件の公判は被告が犯行を全面的に否定しており、大変興味深い内容のため転載しました。
大阪ビデオ店放火事件に関する報道は、どうやら産経新聞のニュースサイトが一番詳しいようだ。私は産経をとって
いないので確認していないが、恐らくは本紙ではここまで詳細に法廷でのやりとりを記載していないだろう。
http://sankei.jp.msn.com/topics/affairs/10670/afr10670-t.htm
公判内容も三部に分けて詳述されているが、実は逮捕から起訴の間に、被告の供述が変遷していった様子も追いかけてあり、丁寧な後追い取材がなされている。
当初この事件は犯人(とされる被告)が現場で逮捕され、しかも早くから自分が放火したと自供していたことから、
各社の報道も彼が犯人であるという方向で塗りつぶされていた。報道機関も、本人の自供がはっきりしているのならその方向でやらざるを得ない。
ところが、20日間の勾留期限も終わる頃になって、国選弁護人の熱心な話しかけにより、段々供述が変ってきたという。以下はその産経サイトから。
『12日には「火をつけた直後に記憶がない時間がある」。17日には「火をつけた記憶がない。キャリーバッグを持って入った記憶もない」と放火そのものを否定し、「たばこを5本程度吸ってから眠くなり、気がついたら部屋に煙が充満していた」と失火を主張。接見では弁護士に「検事は敵なんですか」と尋ねたという。
変遷の理由について、岡本弁護士は「取り調べがきつかったから。『寝てて起きたら火がついてた』と最初に警察に言ったが、刑事から『そんな話が通るか』と言われ、しようがないから認めた」と説明した。』
一般の方には全く分からないと思うが、取り調べを経験した者には彼の発言に頷かされるところがある。
「検事は敵なんですか」と(弁護士に)尋ねたー
この発言に、私はこの被告が実は相当きまじめで小心な人物ではないかと感じた。
なぜなら、罪を犯して調書を取られる側は必ずしも皆根っからの悪人ではなく、自分の罪に正直に向き合う人間もいるからだ。
そういう人は、検事の質問になんでも答えてしまう。正直に答えることが検事の心証をよくすることだと勝手に錯覚してしまう。ところが検事の方ではそんな気は全くなく、話せば話すほど罪は重くなるだけなのだ。
本当は黙秘権もあるのに、刑事や検事が声を荒げると、話さなくてもいいことまで話してしまい、それによって罪が重くなり、さらには冤罪になった例も数多くある。この事件の場合も、小心な被告が経験豊富な検事の口車に乗せられて、彼らの用意した筋書き通りに話したような印象を受ける。
つまりいうまでもなく、法廷の場で検事は被告の「敵」である。彼らは「正直に話せば手心を加えてやろう」などとは全く考えていない。逮捕された者は起訴しなければならず、起訴した者はメンツにかけて絶対に有罪にしなければならない、という頑迷な思考回路が出来上がっているからだ。
更に「そんな話が通るか」と刑事にいわれたー これは私も云われた。少しでもかれらの筋書きと異なることをいうと、必ず帰ってくるのがこのセリフである。もちろん嘘をついている相手に対してはこういうしかないのだが、正直に話していても彼らの筋書きに合わなければ、そう云われることがあるのだ。
私は「そんなことを云われても事実がそうなのだから仕方がない。違うというなら立証してみせろ」と散々やり合って一歩も引かなかったが、殺人が絡んでくればそのプレッシャーも半端ではないから、被告が認めてしまった気持ちも理解できるのだ。
ただ残念ながら、この記述を読んだだけでは被告の供述の真偽は判然としない。火災直後に被告が自ら火をつけた、と語ったという証言もある。
ただ被告のいた部屋よりも激しく焼けている部屋があり、そこが本当の火元だという弁護側の意見や、18号室から火の手があがるのを見た、といっている目撃者の証言に疑問符がつくなど、被告を有罪にするにはまだまだ解決を要するハードルがある。公判は集中的に行われるので、引き続き産経新聞が追いかけてくれることを期待している。