本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

出所者が再犯を犯さざるを得ないメカニズムとは(2)

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 また朝日新聞に底の浅いべた記事が載っていた。http://www.asahi.com/national/update/1027/TKY200910270449.html



(転載)

「刑期延ばそうと」出所間近の受刑者、消火器噴射容疑



 刑務所で暴れれば、刑務所に長くいられる? 青森刑務所は27日、刑務所内の工場で消火器を噴霧したとして、40代の男性受刑者を器物損壊公務執行妨害の疑いで青森地検書類送検し、発表した。同刑務所によると、この男性は刑期をまもなく終える予定だった。



 発表によると、男性受刑者は6日午前10時25分ごろ、刑務所内の繊維製品の加工製造を行う工場で消火器から消火剤を噴射。製品などを汚したうえ、持っていた消火器を窓ガラス4枚に打ち付けて割った疑いが持たれている。



 工場内では約50人が作業し、刑務所職員1人が指導にあたっていた。職員が事務机を離れたすきに、事務机付近に置かれていた消火器を奪われたという。



 男性受刑者は窓ガラスを割った後はおとなしく取り調べに応じたという。そこで話した動機は「消火器を噴霧すれば、刑を延ばせると思った」。同刑務所の古川盛悦総務部長は「どの受刑者も早く出所したいと思うものなのに、こんな動機は聞いたことがない」とあきれた様子だった。

(転載ここまで)





 以前このブログをはじめたときに題材にしたのは読売の記事だったが、朝日も底の浅さは似たようなものだ。



 この記事は警察?発表を書き写ししただけで、何の取材もなされていない。なぜこの受刑者がそのような行動をとったのかが書かれていないのだ。行政の発表を垂れ流し、それをデスクが面白そうだと三面記事に仕立て上げている。



 私の経験から類推するなら、恐らく彼には出所しても行く当てがなかったのだろう。青森刑務所はB類(累犯)刑務所だから、出所しても仕事に就ける可能性はまずないのだ。



 累犯だから恐らく4〜5年は入っていただろう。それだけいても、自分の財産がなければ刑期中の報奨金しか現金がないが、たぶん10万にも満たない金額だ。



 その金だけを握りしめて娑婆にでても、一・二週間でなくなる。恐らく住民票は抹消されているから即「住所不定・無職」となる。住民票がない住所不定者には生活保護はおりない。保証人となる身寄りがなければ社会福祉協議会などからの緊急援助金の類も受けられない。稀にNPOなどの援助団体に繋いでくれる市役所もあるが、もし窓口で追い払われ、有り金が尽きれば即野宿しか方法がなくなる。



 きっとその受刑者にはこの現実が痛いほど分かっていたのだろう。出所してから事件をおこせば裁判等でまた面倒だから、それならム所の中で事件をおこせば手っ取り早いと思ったのではないか。



 私が頭にくるのは、身寄りのない出所者の過酷な現実を書かずして、「ム所に戻りたいから放火した」とか「ム所にいたいから消火器を噴射した」などと表層的な報道を繰り返す無能な記者たちだ。その行動の裏に隠された意味を探らずして一体何のための記者なのか。行政発表を活字にするだけなら小学生にでもできるではないか。



 色々なブログを見ていると、上記のような大手マスコミの垂れ流し記事が多くのブロガーに誤った情報を与えているのが本当によくわかる。



 彼らがム所の真実を知らないのは仕方ないが、ム所を自分で調べたこともない記者達が適当に書いている記事を読み、「ム所が楽だから」出所者はすぐ再犯を犯すのだと思いこまされているが、大半の場合、それはとんでもない誤解だ。



 正しくは「出所しても生きる場所がないから再犯を犯す」のだ。出所者、特にカネも身寄りもない者たちの置かれた境遇がどれだけ過酷なものか、明日また続きを書こう。



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