河村前官房長官がくすねた機密費はどこへいった?
民主党の小沢問題で大いに評価を下げた検察が、さらに窮地に陥り
そうな事件が勃発している。以下、5日のニュースから。
<大阪の市民団体が河村前官房長官を背任で告発>
2010年02月05日10時00分 / 提供:ゲンダイネット
●東京地検はなぜか消極姿勢
小沢疑惑よりも、こっちの公金“横領”の方がはるかに重大問題だ。自民党の河村建夫前官房長官が昨年9月、2億5000万円の内閣官房報償費(官房機密費)を引き出したのは背任罪か詐欺罪に当たるとして、大阪市の市民団体「公金の違法な使用をただす会」が1日、東京地検特捜部に告発状を出した。
この機密費をめぐっては、別の市民団体が昨年10月、使途開示を求める情報公開請求を内閣官房に出したが、詳細は不開示。このため、市民団体は今年1月、処分取り消しを求める訴えを大阪地裁に起こしている。
「市民団体がこの機密費を執拗(しつよう)に問題視するのは当然です。本来は政策推進や調査情報対策などに充てられるカネだが、河村が引き出したのは昨年8月30日の総選挙後で、しかも、それまでは1カ月1億円程度の支出だったのが、たった2週間で2億5000万円を引き出したのです。目的外支出は明らかで、仮に幹部で山分けしていた場合は小沢問題どころではない」
(政界事情通)
原告代理人のひとりで、弁護士の辻公雄氏はこう言う。「今回の支出は明らかに違法です。野党に転落した自民党が当時、機密費を使う必要性は全くないし、使途を明かさない性格のカネだからといって、“横領”していいはずもない。
東京地検は告発状について『検討させてほしい』と言っているが、小沢事件では市民団体の告発をあっさり受理したのだから、こちらも同様に受理して捜査するべき。仮に受理しなければ、不受理を理由に提訴するし、受理しても不起訴や起訴猶予にした場合は検察審査会に不服申し立てするつもりです」
検察の「恣意(しい)的」な捜査手法が追及されるのも時間の問題だ。
(日刊ゲンダイ2010年2月2日掲載)
これはなかなか興味深い案件だ。官房機密費は完全にブラックボックスで、全く領収書が必要ない「闇の経費」。このご時世でも一ヶ月一億とはやくざも真っ青な金額だが、一説には首相や閣僚の海外歴訪などの費用に充てられることも多いとのことで、その使途全てを追求するのは難しいかも知れない。
しかし、河村の行為は誰がどう見ても「火事場泥棒」の類だろう。
総選挙で負け、すでに政権交代が決まった後に2億5千万を支出する理由は、自民党の赤字補填としか思えない。国家のために使用するならまだ我慢できるが、野に下る敗軍に追銭では全く納得がいかない。
検察は今回の小沢事件で結果的に大失態を演じたと思う。政権党の幹事長を相手によくわからない事案で拳を振り上げ、結局は「大山鳴動してネズミ三匹」で終わった。
なにが一番の問題かというと、これにより喫緊の課題が山積みの国会に無用の混乱と民主党の弱体化を招いたからだ。果たせるかな何の材料もない自民は小躍りして国会審議を放り投げ、小沢問題ばかり追求して国会は空転する。今この国にはそんな余裕はないのに、だ。
もし本当に小沢自身が悪事を働いているのなら、(その可能性がゼロだとは云わないが)やはり逮捕できるというのが絶対条件だったろう。
逮捕まで至れば、裁判は長期化しても検察のメンツは保たれ、世論の支持も得られたはずだ。しかし結果はあまりにも中途半端、結局一体何がしたかったのか全く分からずじまいとなってしまった。
しかし小沢を追いかけ回した執拗さで臨めば、こちらの河村君などは赤子をひねるよりたやすいだろう。引き出したのは河村だし、その金がどこへいったかも彼自身がよく知っている。任意聴取一回で十分、検察の汚名挽回のチャンス到来ではないか。なのに消極的というのは、長年の「ご主人様」に対する遠慮なのだろうか。
もし「領収書がいらない金なので、選挙に負けた候補者の赤字補填に蒔いてしまいました」というならば、それはそれで自民党の評価が更に下がるだけのことだから結構ではないか。
機密費といえども国家予算であり、税金である。野党になってしまってはその予算を使う権限がなくなるのに、落城寸前にごっそり持って逃げた。恥じるところがなければその使途を説明するべきだし、検察は粛々と追求するべきだと思う。そうでなければ、小沢への捜査があまりにも恣意的だったという批判に耐えられないのではないか。