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本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

映画「孤島の王」を観て ー矯正とは何かー

マスコミ・映像関係者の皆様
 勾留施設についての記事制作・番組制作等でのコメントや、ドラマや映画制作の設定監修等でご質問があればお気軽にご相談下さい。報道番組へのコメント、新聞社との特集制作、テレビドラマの設定監修等で実績がございます。

 また、刑務所内部の話、刑務所を中心とした拘禁施設の現状、再犯問題、出所者の社会復帰についての講演・講義も行っております。お気軽にご相談下さい。


ー最近の講演・出演からー     主催団体/講演主題 

2011年10月16日 
千葉県ろう重複障害者施設をつくる会   私の刑務所体験・塀の中で出会った高齢者と障碍者

   11月21日    
学習院大学法学部庄司ゼミ        刑務所の実態と再犯問題
   12月 8日    
矯正と図書館サービス連絡会       刑務所の中と図書の重要性   


2012年1月13日
TBS 「マツコの知らない世界」    マツコの知らない刑務所の世界

2012年2月13日       
週刊現代2/25号にて「転落の記」が紹介されました





 昨日、配給会社からの御招待でノルウエー映画「孤島の王」http://youtu.be/3FwFeinthVcを鑑賞した。刑務所(正確には少年院)のお話しなのでお声をかけて頂いたようだが、素晴らしい作品なので是非ご紹介したい。

 舞台は20世紀初頭のノルウエー。首都オスロ南東の孤島バストイに、罪を犯した11〜18歳の少年たちを収容する「バストイ少年院」があった。過ちを犯した少年たちを俗世間から隔離し、キリスト教の教えに基づいた矯正を施し、社会復帰させる目的で設立されたが、そのあまりに厳格で人間性を無視した「規律」に、遂に少年たちの怒りが爆発、ある日反乱が勃発する・・・一体バストイで何が起きたのか?これは実話に基づく物語だ。

 ノルウエーやスエーデンなどの北欧諸国は、現在世界的に「最も受刑者に優しい国」と言われている。彼の国の刑務所は受刑者の人権を最大限尊重し、まるで大企業の宿泊施設のような作りで、日本の刑務所を体験した者には本当に驚かされる。彼らの刑務所に比べれば、黒羽など旧石器時代の竪穴式住居のようなものだ。

 その北欧諸国にも、かつては人権を抑圧した歴史があった。近代化において、どんな国でも試行錯誤しながら人権擁護を育んできた。彼らが現在受刑者に寛大なのは、別に受刑者を甘やかしているからではなく、再犯を減らすことこそが社会の安定に不可欠だということを十分に理解しているからであり、過度な自由剥奪と抑圧はかえって反発を招き、矯正に寄与しないことを(体験を通じて)知っているからだ。それは今の日本で進行する「厳罰化」が、実は歴史的に否定されていることを意味している。この映画は「罪を犯した人間の復帰には、強制力や暴力は役に立たない」という明快な事実を突きつけてくる。

 私は、権力によって自由を剥奪されることの恐ろしさと苦痛を身を以て体験しているので、劇中の少年たちの心境が余計に胸に迫った。犯罪者といっても、島に集められた少年たちの殆どは軽微な罪であり、彼らの瞳はあくまでも澄んでいて痛々しい。そんな彼らを、命を賭した反乱にまで追い込んでいく「抑圧」の恐ろしさを、映画は淡々とした映像で明らかにしていく。そしてラストは、ハリウッド映画などとは明らかに異なる、静かな感動を見る者に与えてくれるのだ。

 それにしても「ドラゴン・タトゥーの女」スウエーデン版もそうだが、彼の国の人たちが作る映像には、日本人には絶対真似できない凛とした美しさと共に、底知れない怖さ(寒さ?)がある。この映画でも劇中殆どがバストイ島を覆う冬の景色なのだが、もうそれだけで気が滅入って否応なしに作品世界に引きずり込まれてしまうのだ。美しい映像、無駄のない脚本、そして若い俳優たちの才気迸る演技が光る作品ー「孤島の王」は傑作だ。