本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

裁判員は介護殺人未遂をどう判断するか

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昨日から山口地裁で始まった裁判員裁判は、介護に疲れた夫が寝たきりの妻を刺殺しようとしてけがをさせた殺人未遂事件が対象だ。審理は半日で終わり、検察側は懲役4年を求刑した。(朝日新聞



http://www.asahi.com/national/update/0909/TKY200909080397.html



 被告(63)は96年から脳出血で寝たきりの妻を一人で介護し、その介護疲れから無理心中を決意、妻を刺した後自殺を図ったが死にきれず、警察を呼んで自首した。妻の妹が出廷し、被告は献身的な介護をしていたと証言、近所の住民の減刑嘆願書も提出されているという。女性裁判員の一人は自らも介護を行っている身として人ごととは思えないと話し、被告に何度も質問している。



 裁判員制度が始まり、これまでいくつかの判決が出たが、いずれも量刑が争点の事案だった。以前にも書いたが、この制度の中で最も難易度が高いのが検察と弁護側の意見が真っ向から対決するような事案だ。この事件は有罪無罪を争うものではないが、介護疲れという今日誰もが抱えるかも知れない身近な問題を内包しているが故に一層重苦しい判断を迫られる。



 私は黒羽で似たようなケースの老人2人に会った。いずれも介護疲れではなかったが、借金や鬱病の悩みからある日発作的に無理心中を図り、自分たちだけ生き残ってしまった人たちだった。一人は妻を殺してしまったショックで自分では殆ど何も出来ず、自殺願望が強くて作業など出来ず、毎日私たち用務者が付きっきりで「介護」していた。



 この2人はいずれも妻を殺害してしまったので「殺人犯」であり上記の未遂とは罪状が異なっていたが、犯行時に心神耗弱であったと認定され、いずれも懲役4〜5年の刑だった。それでも片方は既に78歳だったから、満期まで勤めれば出所時には83になってしまうのだ。その時「妻殺し」の彼にはすでに身元引受人もなく、出所しても行く当てがない。「ここで死ぬしかないね」と哀しそうに語っていた彼の顔を今も鮮明に思い出す。



 殺人未遂で懲役4年の求刑はむしろ軽い方だが、検察としても状況には配慮している様子が感じられる。それでも3年以上を求刑しているから、裁判所に対して「実刑以下にするべきではない」というメッセージを発しているのだ。これに対し、被害者(妻)も減刑を望んでいることから、弁護側は「懲役3年執行猶予4年」が相当と裁判員に訴えた。判決は本日9日に言い渡される。



 今までなら、こうした事例はほぼ間違いなく実刑判決が出ていた。もし今回執行猶予が出るようなら、四角四面の司法判断に初めて風穴が開くことになり、この制度の導入意義が証明されるかもしれない。判決に注目したい。
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介護殺人―司法福祉の視点から

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