本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

 なぜJALを公的資金で援助しなければならないのか?



 今回は以前メルマガに書いた記事から。

実は以下の文章は11月5日付けのメルマガに書いたのだが、結局それから一週間以上経つものの、JAL救済の基本スキームはいまだにはっきりしていない。さすがに例の社内年金問題を片づけない限り、そう易々と公的資金投入とはいかないようで、先週は社長がOBに協力を呼びかけていたが、なんで今のこの時期なのか。もっと早く、一年以上前にやっておくべきことではなかろうか。



 その前のメルマガにも書いたが、JAL利権とは関係なさそうな前原国交相が一体ナゼあんな会社の救済に熱心なのか、今ひとつ理解できないでいたのだが、BLOGOSという評論ブログサイトに思わず頷く意見が載っていたのでご紹介したい。





<「沈まぬ太陽」を見て思う「なぜ日本航空を潰したらいけないんだろう」という疑問>



映画「沈まぬ太陽」を見てきた。原作は読んでいない。映画も原作も、賞賛する声が多いが、正直、物語には感情移入ができなかった。
見ながら、いろんな雑念がわいてきたからだ。


まず、原作者・山崎豊子氏の姿勢。つまり、ノンフィクションフィクションの中間に位置しているという作品のあり方そのものだ。

沈まぬ太陽」はフィクションという体裁になっている。だが、見れば誰もが作中の「国民航空」が「日本航空」のことを指しているとわかる。日航機事故の「御巣鷹山」も、便名の「123便」も実名。

(中略)

だが、僕はひねくれているのか、本当だろうかと思ってしまった。そもそも、日本航空の給料や労働環境が悪いなんて聞いたことがない。他業種はおろか、同業の全日空との、あるいは海外の航空会社との比較でも、だ。客室乗務員でいうと、フライト先での滞在先は、多くが系列のJALホテルだった。世間一般では一流と言われているホテルだ。少なくとも、会社員が出張で止まるホテルとしては、かなりいいほうのはず。また、客室乗務員やパイロットは、ずっと自宅から空港までは、ハイヤーでの送り迎えだった。経営危機が
言われてからも、確かタクシーだったと思う。本当に「過酷」なのだろうか…。



そして、「国民航空」の経営と癒着している、新聞記者。作中では、国民航空の広報にたかって、銀座で豪遊。泥酔しながらも、広報やホステス相手に「俺は冷静な、酒に飲まれないジャーナリストだ」と叫び、あげくに広報から銀座のホステスをあてがわれる新聞記者が登場する。



多くの登場人物にモデルがいると言われる「沈まぬ太陽」。この新聞記者にもモデルがいる。聞いた話だと、日航の取材をかなり長くやり、日航の人事にまで介入してくる怪物記者。自分の子供を日航に入社させたという噂を聞いたこともあるのだが…。取材対象との一線を超えて結びつくという意味においては、ナベツネ氏なども想起させる。



最後は、組合の委員長を僻地に飛ばしまくる経営姿勢。日航の社長というのは、労務畑出身者が多い。日航においては、労務問題こそ最大の課題であったことが推測できる。とてつもない僻地に長きに渡って飛ばすという考え方にしても、とても、まともな会社ではない。



いずれにしても、映画を見て、そして最近の日本航空の経営不安の報道を見て思うのは、「なんで、この会社を潰したらいけないのか」ということ。経営と社員の姿勢を見るに、この経営状態は当然の帰結と思えてしまう。潰さない理由として政府は「公共性」を言っているようだけれど、全日空もあるし、代替の交通手段だってあるはず。金融や自動車のような、影響範囲の広い、裾野の広い産業とも思えない。国の指示で、採算の合わない地方空港にも就航させられたのはその通りだろうが、それが免罪符になるとも思えない。かわりに優越的な便宜も図ってもらっていたんだろうし。



ともかく、なぜこの会社をつぶしてはいけないのか、仮につぶれたらどうなるのか。そういう報道を読んでみたいんだけれど、どこかに出てるのだろうか…。
(引用ここまで)



 作者のanti-monosさんはテレビ局ディレクター経験者ということで、JALの権力華やかなりし頃をよくご存じなのだろう。内情もよくご存じだ。私は基本的に労組の力が強くて社員を守ってくれるならその方が良いと思う人間だが、JALの場合は明らかにその度が過ぎた。

スチュワーデスに対しても明らかに過剰待遇だったし、昔はその家族でさえ割引で何度も海外に行けたのだ。仕事でJAL宣伝部と

ゴルフをしたとき、参加していた4人全員がセントアンドリュースでプレーした経験があるというのには驚きを通り越して鼻白んだ

ものだ。「沈まぬ太陽」は連載中リアルタイムで読んだが、あそこで書かれたいることは、誇張のないJALの体質そのものだった。



 財務省も「年金問題がそのままでは公的資金投入に国民の理解が得られない」と云っているが、たまには正しいことをいうものだ。会社は潰れそうなのに、その年金500万円(年間)は満額受け取れます、というのはいくらなんでもありえない。



 そもそも公的資金を導入したからといって、無能な経営陣と頑迷な労組、そして高額な年金問題を温存して、この国際競争の厳しい
中でJALが再び高配当を出せる会社に復活できる見込みなどあるはずがない。今後原油が暴落するでもない限り、その高コスト体質は変わりようがないからだ。



 anti-monos氏の云うとおり、JALを潰すとどんな問題が発生するのかどうもよくわからない。自動車会社を潰せば関連の中小企業数百社が共倒れする、という理屈は分かるが、航空会社の産業裾野はそんなに広くないし、そもそもJALしか飛んでいない路線なんて今や殆どない(離島などは別だが、経済的影響度は軽微だ)から、JAL便が一時的に停止しても振り替え輸送は可能だ。



 民主党政府がそれでも潰せないのは、株式市場が未だ昨年のリーマンショックから立ち直っておらず、ここで大型倒産を政府が救わなかったとなると信用不安が加速すると考えての事だろうか。JALの経済的影響度はそんなに大きなものではない気がするのだが・・・ 

 更にもう一つ不思議なのは、公的資金投入が迫っているというのにマスコミ各社、特にTV局報道が非常に静かな印象があること。

やはりかつての大スポンサー様に気兼ねしているのだろうか?かつて銀行への公的資金投入時はもっと大騒ぎになったと記憶しているが・・・。みの君あたりがズバッと「JALの年金なんてゼロでいい!」とやってくれると大変面白いと思うのだが。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ