本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

原燃と電事連が「はやぶさ」を利用して洗脳広告を復活

日本原燃電事連青森県原発推進広告を大々的に復活させている。
以下は3月24日に東奥日報・デーリー東北・陸奥新報に掲載された30段広告だ。

最初にこの話を聞いたときは、5段か15段くらいの広告を想定していたのだが、なんとフルカラー30段、しかもあの「はやぶさ」で有名を馳せた川口淳一郎氏を、原発推進芸者の神津カンナがインタビューするという形式に驚かされた。敵も復活に本腰を入れてきた、と言うわけだ。

まずはこれが掲載された三紙を見てみよう。
東奥日報    25万部(世帯普及率42%)
○デーリー東北  11万部(   〃 17%) 
陸奥新報     5万部(データなし)
讀賣新聞(参考) 2.7万部(世帯普及率4.7%)

世帯普及率とはその地域にある世帯でどれくらい読まれているかという指標なので、簡単に言えば東奥日報青森県では全世帯の半分近くが読んでいる、ものすごいメジャー新聞と言うことになる
掲載された三紙でほぼ青森県民殆どがカバーされるといっても過言ではない。その三紙全てに30段を掲載した。

料金的には、電力会社や電事連は新聞社と年契約料金を結んでいるから、はっきりはわからない。しかし東奥日報の段単価から類推すると掲載料だけで約500万円、カラー料金100万として合計600万円程度か。
デーリー東北は掲載料270万円、カラー料90万として360万円。陸奥新報が掲載料225万円、カラー80万円で
計305万円。三紙合計で1265万円といったところか。もう少し安い可能性が高い。

これに新聞原稿制作費が別途かかるが、これはもう推論でしかない。デンパククラスなら30段で4〜500万取るが、
地元の広告代理店だったら100万円以下かも知れない。但し、今回は神津カンナと川口氏のコーディネートがあるから、デンパクいずれかの可能性が高いと思う。

ちなみにこうした電力会社の広告出演料はバカ高いのが魅力で、今回はまだ風当たりも強いから一人当たり最低でも200〜300万は払ったろう。下手したら500万だって平気で
払うのが電力会社だ。どうせ電力料金に上乗せして利用者に請求するから、金銭感覚などないに等しい。

さて肝心の中身を見てみよう。

はやぶさに学ぶ 青森そして日本への提言」
残念ながら細かい文字まで読みとれないが、電力会社から青森への提言と言ったら「原発と核燃施設を動かしましょう」しかないわけだから、はやぶさの教訓を原発に応用しましょう、ということになる。


小見出しの「他国の追随をやめ〜」と「国家の自立になくてはならない技術がある」という言葉をわざわざ抜き出しているのは、(本文でははやぶさのことをいっているのだが)共に原発と核燃サイクルのことを指しているに違いないから、
涙ぐましい小細工が感じられる。さらに、「型破りなことにあえて挑戦する人材を」は、反対の多い核燃サイクルを
あえて推進する勇気を持て、と暗示している。型破りなどされたら国が潰れるのだからいい加減にして欲しい。



「成功体験は油断を生むが、失敗は成長の原動力となる」は完全に311以前の原発政策と事故を指していて、原発が事故を起こしてもやがて成長の糧となる、と言いたいのだろう。ではこの言葉を、現在避難している16万人の福島県民の前で言ってもらいたい。彼らがそれを聞いてなんと思うか、
こういう人たちは想像出来ないのだろうか。


「東北には成し遂げる力がある」は読み手を鼓舞する見出し。核燃サイクルをやり遂げよう、と言いたいわけだ。巧妙な刷り込み。


最後の神津カンナのまとめ。全文ではないが、空恐ろしい事が書いてある。というか、原発事故には触れているが、そのせいで今なお16万人が故郷に帰れない、という肝心なことは一切書いていない。
「ある意味で冷酷な準備を積み上げることが私たちに課せられた任務」とは一体どういう意味なのかも分らない。いくら準備しても事故は起きるし、そんな「任務」をしょう義務はない。

そして、「失敗続きだったはやぶさも、最後は成功した」と、ことさらにはやぶさと核燃サイクルとを結びつけようとしている。しかし巧妙にここでは「核燃サイクル」も「原発」の文字も出さないのがミソだ。そして最後に、彼女の作家としての
クセなのか、妙な一文で締めくくっている。
「さあ、お湯を沸かし直してゴミ箱をきれいにしよう!」
これは一体どういう意味か?原発を再起動して核燃サイクルを動かし、核のゴミをきれいにしよう、ということなのだろうが、
そのために原発を動かすのはもうごめんだし、核燃サイクルは20年以上も稼働していないではないか。バカも休み休み言って欲しい。

とまぁ中身の解釈はこんな感じだが、この広告の持つ意味は他にある。ローカルメディアを広告費でスポイルする手法が
また性懲りもなく始まったと見るべきだ。これは311以前への先祖帰りともいうべき事態だと思う。つまり、


青森県の新聞全てがこの広告を掲載したことは、(以前もそうだっただろうが)今後もこれらの新聞は原燃・電事連に対し
 批判的記事を書けないし、掲載出来ない。また、資本関係がある青森放送青森テレビ・FM青森なども同じ

②この広告が久しぶりの掲載であったとするなら、これはシリーズ広告の第一回目だろう。似たような30段・15段が
 これから数ヶ月に一度、掲載されるだろう。

こんなトンデモ広告を掲載し、毒饅頭を食って電力会社の宣伝をするような新聞やテレビは、報道機関を名のる資格がない。彼らはまた311以前の状態にに戻ることが、恥ずかしくないのだろうか?

職親プロジェクトについて思うこと

<取材やコメント、監修や講演等のご相談は ryu.homma62@gmail.com までお気軽にどうぞ>

              <最近の活動>
2012/12 大阪朝日新聞にコメントしました(衆院選挙の争点について)
2013/2/10 兵庫県リーガル・ソーシャルワーク研修にて講演しました
      講演テーマ「私が刑務所で出会った障碍者・高齢者
2013/3 東京新聞にコメントしました(オリンピック招致について)
3/11 阿佐ヶ谷ロフトで新刊発売記念対談{タブー×タブー×タブー」
      (慶応大学放射線科講師近藤誠氏、鈴木邦男氏)
3/14 三省堂神保町本店にて新刊発売記念対談「誰がタブーをつくるのか」
      (鈴木邦男氏)
3/23 神奈川県反核医師の会にて講演
      講演テーマ「第5の権力・広告代理店」 
3/28    毎日放送ちちんぷいぷい」インタビュー
      (ホリエモン氏の釈放を受けて)  

<最新ニュース>現在WOWOWにて放映中のドラマ「ソドムの林檎」http://www.wowow.co.jp/dramaw/sodom/ の拘置所ドラマ部分の監修をさせて頂きました。皆さん、是非見て下さい!


ちょっと古くなるが、2月の28日に以下のようなニュースが流れて、結構あちこちで取り上げられていた。今日はこの記事について。(以下朝日新聞より転載)


元受刑者らに職場提供へ協定 「千房」など関西企業7社
関西が拠点の民間企業7社と日本財団(東京)は28日、大阪市内で元受刑者らの就労支援策「職親(しょくしん)プロジェクト」の協定書を交わした。再犯を防ぐため企業が働く場を提供。生活面も指導し、社会復帰を支える。

 企業は刑務所や少年院で面接し、出所や出院と同時に約半年間の就労体験を提供。その間、正規雇用につながる指導をしていく。社員寮や更生保護施設などから通勤でき、職場での悩みも各社が定期的に情報交換する。まずは7社で17〜26人を採用し、5年間で計100人を雇う計画。財団は1人につき毎月支援金8万円を企業に支払う。

 罪を犯し、保護観察中の人(2002〜11年累計)が対象の法務省の調査では、職がある人の再犯率は7・4%で、職がない人の36・3%を大きく下回った。支援策の呼びかけ人で、お好み焼き「千房」の中井政嗣社長は「こつこつ信頼を積み重ね、人生のやり直しに励んでほしい。リスクはあるが、どこかがしなければあかん」と話す。

 7社は千房のほか、串かつ「だるま」の「一門会」▽焼き肉「但馬屋」の「牛心」▽和食専門店の「信濃路」▽建築会社「カンサイ建装工業」▽割烹(かっぽう)「湯木」の「プラス思考」▽美容室「プログレッシブ」(転載ここまで)


 出所者がまだ刑務所の中にいるうちに企業とのマッチングを行い、、出所してすぐに働ける場所を確保する。実に素晴らしい試みであり、参加する7社に対しては最大級の賛辞を送りたい。

ここ数年、犯罪発生率は劇的に減少しているのに、再犯率はジリジリと上昇している。その原因は明らかで、出所しても行く場所がなく、就労するアテがないから生きていく術がなく、万引きや無銭飲食などの軽犯罪を犯して再び刑務所に戻る者が増えているのだ。

私も経験したが、出所を明らかにしたらまず再就職は出来ない。ハローワークでは素姓を隠して面接を受けろというが、その場はうまく誤魔化せたとしても、入社後に真実がばれると、今度は会社側に「虚偽申告」であると訴えられる可能性がある。

 ましてや現在はネット社会であり、犯歴は半永久的にネット上に残る。そして誰でもそれを目にすることができる。いつ自分の素姓がバレるかと、びくびくしながら働いている出所者が非常に多いのだ。

だから、犯歴を承知で雇用してくれるのは大変ありがたい。しかし、実はこのニュースの裏には非常に大きな問題が潜んでいる。こういう取り組みが大ニュースになるということ自体が深刻な問題なのだ。

前述した再犯率がなぜ下がらないかというと、日本には一度犯罪を犯した者が再チャレンジできる仕組みがないからだ。年間約 1万5千人が出所するが、元々自営であったものを除いて、前科を明らかにすれば殆ど再就職口はない。その前に出所して住む場所さえないのだから、生きるか死ぬかの選択を強いられて、仕方なく軽微な罪で再びムショに戻る。出所後5年以内に再犯すると、どんなに軽微な罪でもほぼ実刑になる。

このような状況を延々と放置してきたのが国である。全国の更生保護施設が満杯にもかかわらず放置し、NPOや善意の人々の努力に任せきりにしてきた結果が再犯率43,8%の高止まりを招いた。このプロジェクトの方達も、国の無策を十二分に知っているからこそ立ち上がったに違いない。

 この取り組みは、日本財団の後援を得ている。つまりは企業と財団の熱意によって運営される訳だが、それでも毎年の出所者数からすれば、5年間で100人の雇用は焼け石に水というレベルだ。こうしたプロジェクトが全国で続々と立ち上がればいいが、残念ながらそのような機運はない。

 このような取り組みが全国に拡がるのを首を長くして待つか、それとも国による抜本的取り組みを望むか。私は、この問題は善意の企業や人に任せるだけでなく、国が主体的に取り組むべき重大案件だと思う。そうでなければ、再犯率はまだまだ上がっていくのではないか。

名もなき受刑者たちへ 「黒羽刑務所 16工場」体験記 (宝島SUGOI文庫)

名もなき受刑者たちへ 「黒羽刑務所 16工場」体験記 (宝島SUGOI文庫)










 23日の反核医師の会講演の続きを。

ホリエモンの出所に思うこと

         「希望は強い勇気であり、あらたな意志である」マルチン・ルター


[刑務所問題]ホリエモンの出所に思うこと
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昨日、ホリエモンこと堀江貴文氏が長野刑務所を仮出所した。さすがホリエモン、19時の記者会見はNHKまで取り上げるほどの人気ぶりだった。

正直、私はムショに入るまでの彼の言動は好きではなかった。ツイートなどで時おり感じる傲慢な態度は改めるべきだと思っていた。入所の際も派手なパフォーマンスを展開し、この人は反省がないのか、とも感じていた。

それが、昨日の記者会見の内容を聞いて、少し彼を見る目が変わった。写真を見ても入所前のトゲトゲしさがなくなり、会見では素直に自分の罪を悔いていた。別に刑務所に入っていた間に思想教育があった訳ではないし、誰も彼に反省を強いた訳でもないだろう。それでも彼は2年前とは打って変わって頭を下げ、多くの人に迷惑をかけた、殆どの訴訟は和解している、と語っていた。彼もム所の中で一人になって、色々考えることがあったのだろう。

そして私が注目したのは、会見の中で彼が刑務所の様子に言及し、更生保護に役立ちたい、と言ったことだ。
入所中のツイートから見て、彼が養護工場の用務者をしているのは分かっていた。かつて私も働いた場所だから、その苦労は容易に想像できる。その仕事を1年以上やった結果、彼の中に弱者を慈しむ心が芽生えたのではないか、と感じた。

入所前のホリエモンは「金こそすべて」の拝金主義を肯じて恥なかった。その発言からは持たざるものや弱者に対しての配慮など全く感じられることはなかったが、昨晩は明らかに異なるものを感じたのだ。刑務所、その中でも養護工場には、社会の辛い縮図が詰まっている。彼もそれを間近に見て考えることがあったのだろう。

 その彼の発言に対して、早速「更生保護への取り組みはそんな甘いもんじゃない」「覚悟がないならやるな」という発言も飛び出した。しかし私はそうは思わない。彼のような知名度がある人が語ることこそ、国や法務省が何十年もかかってできなかったこと、つまり日本の更生保護の実情を満天下に知らしめ、多くの人々に知ってもらえる可能性があるからだ。

 更生保護つまり出所者支援は国家の急務だ。毎年刑務所を出所する約3万人の45%近くが社会にもどれず、再び軽微な罪を犯してム所に戻る。その殆どの原因は、社会に彼らが戻る居場所や働く場所がないからで、国は戦後延々とその受け皿作りをせず、僅かな更生保護施設と善意の人々に対応を任せきりにしてきた。その無理な体制がいよいよ限界に来て、現在の再犯率高止まりになっているのだ。

 しかし国民の多くはその実情を知らず、出所者がム所に戻るのはそいつがワルだからだ、程度にしか思っていない。しかし繰り返すが、出所して一時的に身を寄せるところがあり、住む場所を確保して仕事があれば、多くの人々が再犯などしないですむのだ。それをホリエモンが語ってくれれば、その拡散力は桁違いである。

 収監中からツイッターで語っていたが、彼はこれから宇宙ロケット事業などに打ち込んでいくのだろうから、更生保護は本業にはならないだろう。でもそれで構わない。彼がム所の中の実情や出所者が抱える問題について、様々な場所でその改善を訴えてくれれば、必ずや多くの人々、特に今までこの方面に全く関心がなかった若い人たちが聞く耳を持ってくれるだろう。私はそこに大いに期待している。どんどん発言していって欲しいと思う。

 

第5の権力・広告代理店

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3月23日、神奈川県反核医師の会様からお招き頂き、『第5の権力・広告代理店ー電通を頂点とする広告代理店によるメディアコントロールの仕組み』と題して講演させて頂いた。同日の模様はIWJさんによってアップされているので、そちらでもどうぞ。http://www.ustream.tv/recorded/30251459

当日はメディアコントロールについて話して欲しいとのご要望だったので、私からは「誰がメディアコントロールをするのか」「なんのためにするのか」「その手法は何か」という幾つかの論点に絞ってお話しをさせて頂いた。

反原発の立場の多くの方が「真実を伝えないメディアが悪い」「マスコミはマスゴミだ」とマスコミ批判をしている。しかし、ではなぜマスコミが真実を伝えられないのか、ということまで理解している人は、実は結構少ない。つまり問題の表層しか知らないで文句ばかり言っている。これでは何も変らないと思って、「誰がマスコミをコントロールしているのか」をはっきりさせる意味で「電通原発報道」を書いた。

とはいえまだまだ拙著をご存じない方も多いし、会場に来られた方々もご存じない方もいるので、かみくだいてお話しさせて頂いた。

結論から言えば、日本でマスメディアをコントロールできるのは電通だけ(能力的には博報堂も可能)だ。彼らは巨大広告主の広告出稿量(額)をバックにメディアと交渉し(圧力をかける、とも表現出来る)ネガティブ情報を封じ込める。その最悪の形が311以前の原発報道封じ込めであった。

もともとメディア各社は広告によって経営がなりたっているから、巨大クライアントに出稿額を減額されると、たちまち経営に甚大な影響が出る。経営陣的にはそこは避けたいから、クライアントの代弁者たる広告代理店が交渉に来ると萎縮してしまうのだ。以下、箇条書きで講演内容をご紹介。


①殆どのメディアの経営は広告収入で成り立っていて、特に一部の巨大クライアント(有名企業)の出稿に大きく依存している

②ゆえに、出稿額確保のためにはそのクライアントに便宜を図る。つまりネガティブ情報は発信しなくなる。311以前の東電はじめ電力会社のネガ情報がほとんどなかったのはそのためである
③さらに、メディアは広告出稿・販売の両面を広告代理店に強く依存している。特に電通博報堂への依存度は各社とも5割以上に達しているだろう

④つまり、メディアは経営の根幹を完全に電通博報堂に握られてしまっていて、両社に対しては強気に出られない。
⑤マスコミは「第4の権力」と称されるが、そのマスコミを広告出稿額、つまり経営的な側面から完全に凌駕・掌握しているのがデンパクである。だからこの両社、特にシェア1位の電通を「第5の権力」と提議したい。

⑥そして日本におけるニュース配信の大元である共同通信社時事通信社はともに電通の株主である。つまり両社が電通を批判すれば同社の株価が下がる恐れがあるので、これまたネガティブ報道は抑制される。つまり、事実上誰も電通を批判出来ない体制にあることは、もっと広く国民に認識されるべきである
⑦以上から鑑みて、広告出稿に頼るマスメディアは「報道機関」たりえない。かれらはただの利益追求第一の企業となんら変りはなく、むしろ「メディアの良心」などと言われるのは自身でも迷惑だと思っている。

等々、日本のメディア構造についておよそ上記のようなお話しをさせて頂いた。残りはまた明日にでも。

国際オリンピック委員会に対する提言掲載

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      講演テーマ「第5の権力・広告代理店」 
3/28     毎日放送ちちんぷいぷい」インタビュー
      (ホリエモン氏の釈放を受けて)  


 本日、国際オリンピック委員会への書簡」への賛同人に加えて頂いたので、同文書をこちらにも掲載させて頂く。
私が2回にわたって述べた反対理由と重なる点が多く、非常に共感を覚えた。今後メディアへの拡散(恐らくは黙殺されるだろうが)、記者会見の開催などを通じて広く世界へ訴えていきたい。



March 2013

国際オリンピック委員会会長ジャック・ロゲ伯爵及び委員の皆様、及び同委員会評価委員会委員長クレイグ・リーディ様と評価委員の皆様へ

To IOC chairman Mr. Jacque Roggue and its members,
Chief of the IOC evaluation commission, Mr. Craig Reedie and its members


「スポーツを通じて平和でより良い世界の実現に貢献する」という崇高な理念のもと日々ご尽力されている、国際オリンピック委員会会長ならびに委員会の皆様方に対し、深く敬意を表します。
We would like to express our deep respect to the chairman and the members for your continued efforts to contribute to the realization of peaceful and the better world through sports.

さて、2020年オリンピックを東京に招致すべく立候補し、以後今日まで東京大会招致に向け積極的活動を行っております、わが国日本は、ご存じの通り、去る2011年3月11日、東日本大震災という極めて甚大で過酷な災害を経験し、その地震津波による福島第一原子力発電所事故までも経験しました。
Currently, Japan has been acting vigorously in order to become the 2020 host country. As you know, our country experienced the East Japan Great Earthquake in March 2011 with unprecedented catastrophic earthquake and tsunami, which triggered Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident.

発災後、実に二年が経過しようとしていますが、地震津波により甚大な被害を受けた被災地の復興も未だ成し遂げられておらず、またレベル7ー複数の原子炉の炉心溶融ーという人類が未だかつて経験したことのない、未曾有の原発事故においては、収束のメドさえもついていない状況であり、現在(2013.1.31東京電力公表時点)も、最大値として毎時1000万ベクレルもの放射性物質が、1〜3号機から放出されていると言われる状態であります。
Almost two years has been passed but the recovery of the disaster hit areas has not been sufficient. In addition, there are no prospects for recovery from the Level 7 Fukushima nuclear accident with unprecedented multiple reactors’ melt through. Even today, maximum of 10 million Bq/hour radioactive materials are being released from Unit 1, 2, 3 reactors according to Tokyo Electric Company as of January 31, 2013.

さらに日本では地震活動の活発な時期が今も続いており、第二の福島事故が起きる潜在的な可能性も否定できない状況です。(http://enenews.com/guardian-asks-how-likely-is-a-catastrophe-at-fukushimas-no-4-fuel-pool-plant-is-near-fault-as-large-as-one-that-caused-m9-0-quake)
In addition, Japan is still in seismically active era and the possibility of the potential second Fukushima accident cannot be denied. (http://enenews.com/guardian-asks-how-likely-is-a-catastrophe-at-fukushimas-no-4-fuel-pool-plant-is-near-fault-as-large-as-one-that-caused-m9-0-quake)

事故を起こした福島第一原子力発電所の立地する福島県に住む住民は、現在も被曝環境に曝され続けており、すでに福島では児童38,000人の検査で3人目の子どもの甲状腺がん、そして甲状腺がんが疑われる子どもが7人出ており、これは通常の率の10倍です。(http://savekidsjapan.blogspot.jp/2013/01/thyroid-test-and-silence-of-doctors.html)
また、事故前のわが国の放射線防護の法的基準の実に20倍までを許容させようという、まさに異常な環境下に留め置かれたまま、政府による適切な避難誘導措置も未だ行われていない状況です。
Residents in Fukushima prefecture are still being exposed to radiation in the environment and already three children were confirmed to have thyroid cancers and seven 7 others are strongly suspected among 38,000 examined children, which is 10 times higher than normal rate. However, the current permissible reference level after the accident has been kept at 20mSv/year, 20 times higher than the legal permissible level of 1mSv/year. The children have been left in the contaminated areas under abnormal circumstances and no relocation policy has been implemented by Japanese government.

東京においてさえ、甲状腺異常や呼吸器疾患を含む健康障害が見られています(http://savekidsjapan.blogspot.jp/2013/01/315.html)。国全体としてもマイコプラズマ肺炎などの呼吸器系疾病が2011年3月の事故以降、明らかに増大しております。http://www.nih.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1659-18myco.html
Even in Tokyo, health hazards including high rate of thyroid anomaly and respiratory disorders have been observed (See http://savekidsjapan.blogspot.jp/2013/01/315.html). According to the National Institute of Infectious Diseases, disease such as Mycoplasma pneumonia has been obviously on the rise since the 2011 March accident nationwide. (http://www.nih.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1659-18myco.html).

2011年の3月、東京都の住民が呼吸器により吸入してしまった放射能の量は約3,600Bq です。現時点で因果関係が証明できていないにしても、東京を放射性雲が通過していた際に、東京都はリアルタイムで大気中の放射性物質量を計測していながらも、都民に屋内退避などの警告を発しなかったことに起因することも疑われます。その場合、当時の都知事、石原慎太郎氏と副都知事、猪瀬直樹氏(現都知事)の責任は重いと言えるでしょう。
In March 2011, the inhaled radioactive material of Tokyo residents is estimated approximately 3,600Bq. Though the causal relationship cannot be proven at this stage, Tokyo residents’ health anomalies could be due to the fact when the radioactive plume was passing Tokyo, while Metropolitan Government did not give any warning to the residents to stay inside though they were measuring the realtime data in the air. If that was the case, the responsibilities of the then Tokyo Governor, Mr. Shintaro Ishihara and Vice Governor, Mr. Naoki Inose (current Governor) could be grave.

また日本はいまだ地震の活動期にあり、現政権が原発推進である中、万一オリンピックの開催中に新たな事故が起き、そしてこのような2011年3月のリアルタイム計測値をタイムリーに公にしなかった東京都の姿勢があるのでは、選手団を守られる保証はないと考えます。

In addition, Japan has still been seismically active and current regime is pro-nuclear. In case there was another accident during the Olympic Games, we do not think there would be a guarantee that the IOC members or groups of athletes could be protected by Tokyo Metropolitan Government that had not announced the March 2011 real time radiation data in a timely manner.

わが国が国際オリンピック委員会に提示した「立候補ファイル」においては、『環境理念「環境を優先する2020年東京大会」』として、以下のごとく謳われています。
「オリンピックには、競技自体のすばらしさに加えて、環境学習及び環境意識に影響を与える偉大な力、他に比べるもののない発信力があ る。世界最大規模かつ先進的な都市の一つである東京の中心でオリンピックを開催することは、総合的な環境政策を示し、いかにして都 市・人間・環境保護の必要性を密接に協調させるかの典型的な実施例を示すことになる」

By the way, the following is the statement in the Candidate File submitted to IOC from Japan:
Beyond the sports competition itself, the Games hold significant power to communicate, and exert enormous influence in terms of environmental education and awareness. To this end, holding the Games in the heart of Tokyo, one of the world’s largest and most modern cities, will be a showcase of comprehensive sustainability strategy and a prime example of how cities, humanity and environmental protection can be closely aligned.

「立候補ファイル」には、上記のように「環境先進国」であるかのように宣言しているものの、現在のわが国は、原発事故により今も放出されている放射能汚染の影響範囲の把握さえ十分正確になされていない状況にあります。
As in the above, the statement says as if Japan is an environmentally developed country, but in fact, we do not even know the impact of radiation contamination still being released from the nuclear power plant.

食物汚染も一部のサンプル調査のみにとどまり、その多くはセシウム以外の放射性核種の測定は行われていないため、ストロンチウム90の値を含め、実際の汚染を把握しているわけでもなく、しかも、そのセシウム汚染の基準値は100Bq/kg未満とされており、原発事故前に食品中に含まれていたとされるセシウム濃度(0.1Bq/kg)の、実に1000倍という極めて高い数値を「基準値」として、食材を全国に流通させているのが実態です。
In regard to food contamination also, only limited samples have been measured and radionuclides other than cesium have seldom been measured, thus we do not know the real contamination in food including strontium 90. The permissible level of cesium is up to 100Bq/kg, which is 1000 times higher than the average figure (0.1Bq/kg) before the accident, and these food stuff have been distributed nationwide

また放射能汚染を伴った震災瓦礫を日本各地で広域処理し、放射能汚染を日本全国に拡散させるという、とても常識では考えられない政策が平然と続けられている状況でもあります。
Furthermore, radiation contaminated debris generated from the disaster have been distributed and incinerated nationwide, which is totally an unthinkable policy.

候補者ファイルの文言に戻りますが、理念において謳っている「環境意識」がこのような状況下で得られるでしょうか?また、東京が「都市・人間・環境保護の必要性を密接に協調させるかの典型的な実施例」となり得るでしょうか?果たして、このような非常識な政策を推し進めている国家が、胸を張って言えるものでありましょうか?
Back to the Candidate File statement, what could be the “environmental awareness” under this situation? How could Tokyo become “a prime example of how cities, humanity and environmental protection can be closely aligned” How could a state promoting such nonsense policies assert such a statement?

また「立候補ファイル」の『05環境 大気汚染及び騒音公害対策』の項には、以下のような記述もあります。
「また、放射線放射性物質への対応については、福島原子力発電 所事故に係る放射線放射性物質モニタリングを確実かつ計画的 に実施することを目的として、関係省庁、自治体及び原子力事業者等 が実施している放射線放射性物質モニタリングの調整等を図るため、国によりモニタリング調整会議が設置されている。この会議のもと、国の関係省庁、自治体、原子力事業者等が役割分担を行い、大気・ 水道・海域・食品などの様々な対象について、放射線放射性物質モニタリングを実施している。
その中で、空間放射線量については、福島原子力発電所事故以前 から、全国47箇所(各都道府県に1箇所以上)のモニタリングポストで モニタリングを実施していたが、福島原子力発電所事故後、2012年4 月からモニタリングポストを増設した。モニタリングポストによる測定 結果をみると、東京都及び地方会場都市のモニタリングポストでは、 国際放射線防護委員会(ICRP)勧告における放射線の防護規準を十 分満足している」

In addition, in 05 of the Candidate File, Measures against air and noise pollution, there are following descriptions.
The Tokyo 2020 Games planning, construction and operations will fully comply with tight regulations specified by laws and ordinances on air pollution and global warming, particularly through vehicle emissions. Moreover, the TMG will further reduce the environmental load by making use of Japan’s excellent environmental technologies such as low-emission and fuel-efficient vehicles and low-noise and low-vibration construction machinery.
TOCOG will maintain close dialogue with members of local communities in which events are held, paying close attention to their needs.
Systematically monitoring radiation and radioactive substances in the wake of the TEPCO’s Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident, the National Government has set up a Radiation Monitoring Coordination system, coordinating the radiation monitoring now conducted by relevant authorities, municipalities and nuclear operators and related companies. The authorities, municipalities and nuclear operators and related companies share the roles to carry out radiation monitoring, including for air, water, and food.
Prior to the Fukushima Daiichi nuclear incident, air radiation levels have been monitored in 47 monitoring posts across Japan (more than one monitoring post for each prefecture). Following the nuclear facility incident in Fukushima, the number of monitoring posts was increased in April, 2012. According to results from the current monitoring posts, the radiation levels in Tokyo and co-host cities have been well within the safety standards for radiation recommended by the International Commission on Radiological Protection (ICRP) (as of October 2012).

しかし実際は、事故現場から200km以上離れた首都圏においても、放射性物質の堆積がいたるところで認められているという事実があります。しかし、そのような状況であるにも関わらず、行政は都民への積極的注意喚起さえも行っていない状況なのです。
However in reality, in the Tokyo Metropolitan area, more than 200km away from the Fukushima nuclear accident, there are deposits of radioactive materials everywhere. In spite of this fact, the government does not implement any measures such as giving out warnings to the residents of Tokyo Metropolitan Area.

2012.6.18付け「AERA」という週刊誌に特集された記事によれば、東京都内においても判明しているだけで20箇所をこえる地点で、数千〜数万Bq/kgという極めて高濃度のセシウムを含んだ堆積物が道端に放置されていることが、市民グループの調査で明らかにされております。(ちなみに日本では100Bq/kg以上は低レベル廃棄物としてドラム缶に入れられ隔離されておりました。)
According to AERA, a weekly magazine dated on June 18, 2012 by Asahi Newspaper, deposits exceeding thousands or even tens of thousands Bq/kg high concentration cesium were found at more than 20 spots in Tokyo by a citizen’s group survey. (In Japan, radioactive materials more than 100Bq/kg used to be stored in drum cans as low level nuclear waste before the accident.)

例えば、今回の東京大会立候補ファイルに「ヘリテッジ・ゾーン」として区分されている皇居周辺エリアにおいては、北の丸公園で91,790Bq/kgという驚くべき高濃度の汚染を筆頭に、数カ所で同様な数万Bq/kgの汚染堆積物の存在が確認されております。
この地域はオリンピックマラソンコースとして予定されている「内堀通り」とは至近距離にあり、これらの汚染物質が風にあおられ飛散すれば、アスリートや観客が呼吸により吸い込み、内部被曝する危険性が懸念されます。

As for one example, the surrounding area of the Emperor’s Palace, so called the Heritage Zone in the Candidate File, 91,790Bq/kg soil was found in Kitanomaru Park and tens of thousands of Bq/kg deposits were found in other several spots in this area.  This area is in vicinity of Uchibori-dori, a part of the full marathon race course. So if contaminated particles are blown by the wind, there would be a serious concern of internal radiation exposure to participating athletes through respiratory inhalation.

これらの汚染堆積物が厄介なのは、都がモニタリングし公表している空間線量に、これらの汚染が一切反映されないところです。しかもこれらは、風雨によって流れたり、寄せ集められたりして、現在もその場所に留まっているとは限りません。
What makes the issue more difficult is that these contaminated deposits are not reflected in the air dose monitoring figures announced by the Tokyo Metropolitan Government. In addition, these deposits do not stay at the same spots and moves around and get accumulated through winds and rain.
猪瀬直樹東京都知事は1月10日、ロンドン行われた記者会見において「現在の東京の放射性線量値は平常値、つまりロンドンと変わりません」と述べ、これらの都内の放射性物質による環境汚染、土壌汚染については一切言及しませんでした。
「ロンドンと線量が変わらない」と言っても、ロンドンにはこのような極めて危険な堆積物は、おそらく道端に存在しないはずです。

At the press conference in London, the Tokyo Governor Naoki Inose said, “The radiation dose in Tokyo is under normal condition and the same as in London,” ignoring the soil contamination. Even if the does is not so different from London, there should not be any hazardous deposits in any street in London.

さてこのような「極めて異常な環境」、そして「放射性物質の汚染を把握しながら放置する」といった、常識では考えられない行政が執り行われている都市が、オリンピック開催地として立候補することは、「環境先進国の首都」として相応しい行動と言えるのでしょうか?

Is it an appropriate action to be the “capital of the environmentally developed nation”? Is it appropriate to become the candidate of the Olympic Games while the environment condition is not normal and nothing has been done for the radiation decontamination though the municipal government acknowledges the fact?

「開催地東京は福島から離れており安全」と猪瀬都知事は言いますが、未だ福島県民を、福島の子どもたちを被曝させ続ける環境におきながら、他方、東京だけが現実から目を背けて、都合の悪いことから目を背けて、被災地の救済せず置き去りにしたまま、"Discover tomorrow"などと「未来の夢」をただ無責任に夢想すること、それが今の日本が、今の東京が、今すべきことなのでしょうか?
Though the Governor Inose said, “The hosting city Tokyo is distant from Fukushima and it is safe, “ but is it a legitimate action to leave Fukushima residents and children under the radiation exposing circumstances, and at the same time to seek for the dream under the catchphrase, “Discover Tomorrow”? Is this a justifiable action for Tokyo and for Japan to do at this moment?

2013年3月1日より、国際オリンピック委員会の評価委員による立候補都市視察が開催されました。ぜひ、評価委員の皆様方におかれましては、現在わが国日本が直面している危機的環境問題について、また今なお危険に曝され放置され続けている子どもたちがいること、そしてそれらに対する適切な人道的対応がなされていない、というわが国の危機的政治状況について、十分にご賢察いただき、今回のオリンピック開催地選定における評価、査定の参考にしていただければと存じます。
Since March 1, 2013, IOC members has been visiting Tokyo for inspecting a host candidate city. We truly hope that the committee members would consider the critical situations of our country and give proper assessment for selecting the hosting city for the 2020 Olympic.

最後となりますが、是非この手紙への返信を早期に頂けましたら大変ありがたく思います。皆さまお忙しい中恐縮ですが、その際、以下の3つのシンプルな質問への皆さまの率直なお答えを頂いてよろしいでしょうか?
In the end of this letter, we would be very appreciative if we could have your reply as soon as possible. Since we are aware that all of you are very busy, would it be possible to for us to have your answers on the following three simple questions?

1.皆さまは、上記のような、東京都もかなり放射能汚染されているという事実をご存知でしたか?
Did you know that Tokyo has been contaminated as described in the above?

2.上記に挙げたような、甲状腺異常や肺炎などの健康異常が事故後に増加していることをご存知でしたか?
Did you know that health anomaly such as high rate of thyroid anomaly and increased pneumonia is observed as in the above?

3.福島などの高汚染地帯で、今も妊婦や子どもたちも生活し、チェルノブイリの避難基準の4倍も甘い20mSv/年という基準で十分な避難も行われていない中、東京都の「福島から離れているから、東京都ではオリンピックが開催できる」という姿勢は、果たして倫理的観点から正当な行為と言えるでしょうか?
While Fukushima residents including pregnant women and children are living in highly contaminated area under the reference level of 20mSv/year, 4 times as high as Chernobyl relocation standard, is it ethically legitimate to say, “Tokyo is distant enough from Fukushima and thus we can hold the Olympic Games.”


是非皆さまからのご回答を頂ければ幸いに存じます。
Please let us know when you receive this mail and we are looking forward to hearing from you soon.

木村知(総合臨床医、医学博士)
Tomo Kimura (General practitioner, M.D., Ph. D)
竹野内真理(ジャーナリスト、翻訳家)
Mari Takenouchi (Freelance journalist, translator)


以下は、この書簡内容に賛同する方々です。
The following people support the contents of this letter:

肥田舜太郎(広島原爆被爆生存者、医師)
Shuntaro Hida (Hiroshima A-bomb survivor, general practitioner, M.D.)
井戸川克隆(3・11福島第一原発事故放射能被曝者、前双葉町長)
Katsutaka Idogawa (Radiation exposed victim, Former Mayor of Futaba Town, Fukushima)
西山ちかこ(西へ移住の「f.h townを求めて」代表、元川内村村議会議員)
Chikako Nishiyama (Director, NGO Relocation to the West, Former Kawauchi Village assembly person, Fukushima) 大山弘一(福島県南相馬、市民科学者) Koichi Oyama(Citizen scientist, Minamiso-ma city, Fukushima)
柳原敏夫(ふくしま集団疎開裁判弁護士)
Toshio Yanagihara (Lawyer, The Fukushima Collective Evacuation Trial)
松井英介(岐阜環境医学研究所所長、医師)
Eisuke Matsui (Director, Gifu Environment and Medicine Research Institute, M.D.)
山本太郎(俳優)
Taro Yamamoto (Actor)
堀内良彦(汚染血液製剤事件 血友病HIV患者)
Yoshihiko Horiuchi (Tainted blood product case hemophiliac HIV patient)
野呂美加(チェルノブイリへの架け橋 代表)
Mika Noro (Director, NGO "A Bridge to Chernobyl")

木村愛子(ILO活動推進日本協議会理事長)
Aiko Kimura (Aiko Kimura, President, The Japan Association for Advancement of ILO Activities)

谷口修一 虎の門病院血液内科部長
Shuichi Taniguchi (Director, Department of Hematology, Toranomon Hospital)

本間龍(作家)
Ryu Honma (Writer)

兵庫県小野市の「福祉給付制度適正化条例案」は平成の特高だ

兵庫県小野市が恐ろしい条例案を提出してきた。以下、朝日新聞記事から。http://www.asahi.com/national/update/0227/OSK201302270030.html?tr=pc

【広川始】生活保護児童扶養手当の受給者がパチンコやギャンブルで浪費しているのを見つけた市民に通報を義務づける条例案を、兵庫県小野市が27日、市議会に提案した。市は「不正受給防止のための、全国的にも例のない取り組み」という。市には「全国に広げるべきだ」「相互監視社会になる」と、賛否の声が寄せられている。

 名称は「市福祉給付制度適正化条例案」。受給者が給付されたお金を「遊技、遊興、賭博などに費消」することを防ぎ、「福祉制度の適正な運用と受給者の自立した生活支援に資すること」を目的に掲げる。

 パチンコや競輪、競馬などによる浪費により「生活の維持、安定向上に支障が生じる状況を常習的に引き起こしている」と認められたり、不正受給の疑いがあったりする場合、市へ情報提供することを「市民の責務」と明記した。保護が必要な人を見つけた場合も、通報を義務づけている。受給者に対しては勤労と節約を求めている。

 国は8月から生活保護について生活扶助の支給額を引き下げる方針。市には、給付額が絞られる中で受給者の自立支援を一層図らなくてはならない、という考えがある。蓬莱(ほうらい)務(つとむ)市長は27日の市議会で「福祉給付制度の信頼確保と受給者の自立した生活を支援することを目的とする。監視強化ではない」と説明した。

 
 いやあ、びっくりした。通報を「義務づける」のである。つまり、見つけたら必ず密告せよ、と言っているのだ。まるで旧社会主義国のようではないか。ではこの小野市というのは、それほどまで生活保護不正受給者が多いのか、と誰しも思うだろうが、ところがそうではない。そこは赤旗から引用しよう。

『市には2月28日までに、全国から88件の問い合わせがありました。松野和彦市民福祉部長は本紙の取材に「この間の報道にあるような『監視』や『差別』は想定外の反応です」と答えました。また、「市として実際にパチンコ等に頻繁に行く利用者は把握していない」としています』
http://ch.nicovideo.jp/akahata/blomaga/ar140647

 今まで市としては生活保護受給者がパチンコに行ったりするのを把握していないーというのだ。ではなぜ突然、こんな条例案が上程されたのか?そんな必要はないではないか。ところが実は、非常にくだらない理由があったのだ。ブログスに条例案がアップされているので読んでみると、次のようなくだりがあった。

(適正化協議会の設置)
第6条 市長は、第4条第1項及び第2項に規定する福祉制度の適正な運用を総合的かつ効果的に推進するため、小野市福祉給付制度適正化協議会(以下「適正化協議会」という。)を設置するものとする。
2 前項の適正化協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、別に定める。

(推進員の設置)
第7条 市長hあ、小野市福祉給付制度適正化推進員(以下「推進員」という。)を置き、第5条第3項の規定による情報提供があった場合又はそれに相当する疑わしい事実があると自らが判断した場合は、その詳細な実態を推進員に調査させるものとする。
2 前項の推進員の調査活動は、犯罪捜査のための解してはならない。

 既に市役所の部局があるのに、なぜ「適正化協議会」や「適正化推進員」なる係を新設しなければならないのか?不正受給を糾すのは市役所の既設部署の仕事だ。それなのに、なぜ人件費をかけて新たな部署を設けようとしているのか?

 答えは至極簡単、これは小野市と兵庫県警察OBの為の天下り組織を新設しようとする企みなのだ。警察から要請されて天下り組織を作ろうとしたが、なかなか理由が作れない。そこで何か獲物がないかと見渡してみたら、生活保護不正受給問題があった。こいつをスケープゴートにすれば、すんなりいくに違いないーお気楽な市長はそう考えたのだろう。

 ところが田舎の市長と市議と警察が考えるほど、世の中は甘くない。こんな平成の特別高等警察造りがすんなり許されるはずもなく、大批判にさらされている。そりゃそうだ、市民に密告を奨励するなど、どうみてもありえない。

 かつてソ連や東ドイツなどの旧社会主義国は「大密告社会」だった。物言えば唇寒し、隣人や親戚、果ては親に対してさえ、本音を言えなかなった。いつの間に密告されて、いきなり逮捕されて銃殺、という例が日常茶飯事だったのだ。更に、「密告されたくなければカネを払え」という脅しが国中に蔓延していた。だから密告社会の到来は全力で防がなければならない。小野市市議会の面々は、そうした負の歴史をご存じないのだろうか。

あまりにもいい加減で、歴史を知らな過ぎる。小野市市議会にまともな判断能力があるのなら、このくだらない条例案を否決すべきだ。そうでなければ、日本中の笑いモノになるだろう。

私は東京オリンピック招致に反対です(2)今回の招致は極めて不道徳だ

先々日、今回のオリンピック招致に反対の旨書いたが、今日は若干補筆しておきたい。

私が招致に反対な根拠は以下2点。

福島第一原発事故が全く収束しておらず、今なお多量の放射能を放出しているのに加え、再度地震が起きればより甚大な被害が起きる可能性があるのに、その危険性を無視してオリンピックを招致しようなどあり得ない。これは世界に対する不誠実だ。
原発事故によって今なお避難している人々が今も16万人いる。この方たちの生活再建がなかなか進まないのに、それを忘れたかのようにお祭り騒ぎをしようなど、言語道断である。これは同朋に対する不道徳だ。

 これに対し、招致を主張する連中の主張は、「オリンピックで日本(東京)興しをしたい〜!そうすれば日本経済も復活する!」に尽きる。
 40数年ぶりにオリンピックがくれば、老朽化した東京のインフラ再整備を国のカネ(税金)で大々的に出来る。それによって地価を上昇させ、ミニバブルを発生させて儲けたいのが不動産業界。国家的スクラッチアンドビルドを発生させて儲けたいのが建設業界。世界からの観客ツアーで儲けたいのが旅行業界。オリンピック報道で儲けたいのがメディア業界。つまりありとあらゆる業界が、オリンピックに便乗して儲けたいのだ。
 実は、私自身はそれを否定するものではない。私たちは資本主義社会に生きているのであり、企業が利益追求=儲けを出すことによって労働者も賃金やボーナスを受けることが出来るからだ。私は前回の東京オリンピック開催時はまだ小さかったのでよく覚えていないから、しっかりとこの目で自国開催を見てみたい気も、もちろんある。

 それでも敢えて反対を唱えるのは、とにかく儲けばかりを優先する姿勢が鼻について、極めて不快だからだ。首都さえ全滅させる危険性がある福島第一原発4号機崩落の可能性がまったく解決できていないのに、そんな危険地帯に世界中から人々を集めようとする無責任さには心底呆れかえる。

 更に、福島から避難している16万人もの人々の生活再建がまだ出来ないのに、復興を旗印に祭りをやろう、という無神経さが我慢できない。百歩譲って復興を旗印にするならば、今回の震災で被害を受けた地域でオリンピックを開催するべきなのだ。しかしそれはもちろん出来ない。

 結論から言えば、原発事故の収束を確認してからでないと東京でオリンピックなどやるべきではないのだ。しかし経済的にはそんな悠長に待ってはいられないとして、経済界はこぞって招致万歳し、メディアも全く反対しない。まさしくカネの亡者ばかりだ。

 世界の国々に対する責任を放棄し、同朋の苦しみに対して全く無反応。こんな無慈悲な国がオリンピック招致んなてちゃんちゃらおかしい。だからこそ今回の招致活動は極めて不道徳だ、と申し上げておきたい。