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本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

プリズン・トリック


 

 前回が映画の話だったからというわけではないが、今日はちょっとある本のご紹介を。
 
 昨年の第55回江戸川乱歩賞を受賞した遠藤武文氏の「プリズン・トリック」を読んだ。推理小説はそんなに読まないが、
題名の「プリズン」に惹かれた。題名から想像できる通り、刑務所での事件を舞台にした作品だ。

 帯には「乱歩賞史上最高のトリックだ」と東野圭吾氏が賛辞を寄せている。それが当たっているのかどうかはともかくとして、
興味を覚えたのはその正確なム所描写だった

 物語は実在する千葉県市原交通刑務所内での殺人事件を巡って展開する。ネタバレになるのであまり深く触れないが、その
ム所内の細々とした描写が非常によく出来ていて、これはどうみても経験者ではないかと疑うくらいだった。

 著者は現在損保会社勤務と云うことでその知識もふんだんに活かされているが、ム所内の描写は経験者でしか分からないレベル
だと思う。選者講評が巻末にあるが、東野圭吾氏はム所での密室殺人事件にいたく感動したようで、その気持ちも分かるような気が
した。

 ム所を舞台にした小説はむろん随分あるし、私も読んだ記憶があるが、やはり経験者にしか分からない細かい部分が気になる
ものだ。特に刑務官達の勤務態度や会話などは、知っている人間が読めば「嘘っぽさ」がでるものだが、この作品にはそれがない。

 いや、別に著者が経験者かどうかを問題にしたいのではなくて、どうしたらここまで細かい描写が可能かといえば、自分が
経験していなければ知っている人間に取材する以外に方法はなく、しかもその取材された側も相当気合いを入れて記録を取って
いなければ出来ないだろうということだ。

 私ごとで云えば、ム所生活はたった1年だったが、何かの役にたつかもとノート5冊分の日記をつけ、かなりの記録を取っておいた。
それがなければ本を書くことも難しかったろう。人間の記憶など実にいいかげんなもので、1年も経てばどんどん忘れてしまうから、
今も日記を読み返すと、いつの間にか自分の記憶が間違っていたりすることに気づく。

 だから、この著者の取材先もそういう人間がいた可能性が高い。この作品はム所内での密室殺人が起きる第一章までの迫真性が
実に高く、確かに読者は否応なしに作品世界に引っ張り込まれるだろう。

 ただ、作品としてはちょっと気になる点も多々あった。一番大きいのは作中、語り部?の視点がどんどん変わること。結局、
一体誰が主人公だったんだろうと非常に気になる。それと、肝心要のトリックだが、最後の最後でム所を知るものからすれば、
ちょっとありえない場面が出てくる。しかもそれはかなり重要な部分で、だ。この点は経験者でなければ否定できない点だからこそ
の狙いなのかも知れないが、それまでの緻密なム所内描写が大きな魅力なのに、少々残念。

 それでも、ム所の中を知らない人が読めば、まるでノンフィクションのように迫力十分。ム所内が十分推理小説の舞台として
機能することを教えてくれる極上のエンターテイメントに仕上がっていると思うので、ご一読をお勧めしたい。

プリズン・トリック

プリズン・トリック


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