本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

黒羽の春・観桜会

今日は久しぶりに黒羽刑務所の話題を。



 刑務所において四季の移ろいを感じるというのは、寒暖の差以外では結構難しい。受刑者の服は年中殆ど変らないし、当たり前だが風景が変るわけでもないし、道行く人々を眺めるわけにもいかないからだ。そんな中で、官側はすこしでも季節感を出そうとして、春は観桜(かんおう)会、秋は運動会などの行事を盛んに実施する。中でも観桜会は、黒羽の遅い春を象徴する行事である。



 黒羽刑務所は栃木にあるだけあって、冬はかなり寒い。近くに八溝連峰があり、そこから吹き下ろす木枯らしのために、11月下旬から4月上旬くらいまで、日中でも建物の中は10度以下の日々が続く。



 もちろん時々雪も降るが、既に築後30年以上も立っているから、独居などは特に窓枠がゆるんですきま風が入ってくるので、全て新聞紙やちり紙で埋めたところ、なんと室温が3〜4度上昇したのには驚いた。(もちろん、こうした行為は当然問題になるはずだが、何故か注意されなかった)



 黒羽はぎりぎり関東圏ということで、工場には暖房が入るものの、居室には殆ど入らない。受刑者はどんなに寒くてもコートなど防寒着があるわけではないので、結局支給された服を重ね着するか、高い金を出して、購買許可されている少し厚手の下着類を購入するしか防寒の手段がない(もちろん、それを来たからと行って寒さを防げるわけではない)。工場がある平日はまだいいが、休日になると一日中、本当にただ震えているしかないので悲惨だ。



 ちなみにどんなに寒くても、毛布などを頭からかぶるとか、体に巻き付けるのは規則違反となって懲罰の対象になる。許可されているのは膝にかけるまでなので、昼間は本当に寒いのだ。私は用務者として工場全員の食器洗いなどもしていたせいでアカギレが悪化し、皮膚が裂けて血が流れ出したので、医務官が驚いてビタミンEの錠剤を毎日飲むように処方してくれたが、結局5月になるまで完治しなかった。



 冬の間は窓も開けられずテレビラジオが流れない時間帯は、それこそ世界が死んでいるような静寂が支配するが、そんな黒羽にも3月中旬頃から遅い春が訪れる。日記をひもとくと、3月になると日差しがあたたかくなり、小鳥たちのさえずりが帰ってきたなどという記述が出てくる。このころになるとようやく、休日の昼間に窓を開けることが出来るようになってくる。



 そんな殺風景なム所内の雰囲気を少しでも和らげようと、黒羽では塀の内側に沿って100本以上の桜の木を植えている。これが満開になる5月の連休前後に、全受刑者待望の観桜会が催されるのだ。



 ようするに花見なのだが、この日は昼食時に全受刑者が運動場に出て、工場ごとにまとまって桜の木に向いて座り(つまり塀に向かって座る)、この日だけ許可された仲間の歌や漫才、踊りに興じつつ特別に支給される弁当と菓子をいただく。受刑者が大声を張り上げて歌ったり笑ったりするのが許可されるのはこの観桜会と秋の運動会だけなので、皆本当に楽しみにしており、大いに盛り上がるのだ。



 もちろん酒は全くでないし、いい年をした野郎ばかりの宴など、娑婆にいる身からすれば不気味でさえあるが、そんなものでも有難く感じてしまうのだからム所の抑圧というのは強烈なものだ。この観桜会こそが、黒羽刑務所の春を告げる風物詩で、自分の中でも非常に思い出深い行事として残っている。もっとも、これを再度体験したいとは決して思わないが・・・



 

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