「宇宙戦艦ヤマト復活編」は黒羽出身・西崎義展氏の復活劇だ
さて、今日の題名を読んで誰の話かすぐに分かった方は相当のアニメファン。現在公開中の「宇宙戦艦ヤマト・復活編」の原作・制作
総指揮を勤める西崎義展氏のことだ。彼は約5年を黒羽で過ごし、すくなくともその大半を私がいた第16工場で過ごした人で、2007年12月に出所し、約2年で今回の「復活編」公開にこぎ着けた、デスラー総統顔負けの生命力をもった人だ。
その人生はまさに社会や人々との闘争そのもので、1934年生まれの75歳、尋常な闘争本能ではない。元は手塚治虫の虫プロで営業として働いていたが、その後自らの会社を立ち上げ、「宇宙戦艦ヤマト」を制作、大ヒットを飛ばす。
実は私はヤマトを初回放映で見た最古参のファンで、公式ファンクラブ会員(もちろんもう存在していないが)、懇親会で西崎や松本零士氏とも握手したことがあり、ヤマトの制作舞台裏を結構知っている。1990年代に松本氏と著作権を巡って激しい裁判を繰り広げたが、「宇宙戦艦ヤマト」という発想自体は最初に西崎が出したものであり、松本氏は彼に招聘され、活字でしかなかったヤマトやキャラクターデザインを担当した。本来はいつまでも二人三脚でなければならない二人が骨肉の争いを繰り広げたのがヤマトの不運だ。
彼が何故懲役刑になったかというと、先ずは1997年に覚醒剤や大麻の不法所持で逮捕。翌年保釈中に本人所有のヨットにグレネードランチャーなど(!)などの武器弾薬を所持していたところを発見され銃刀法違反で再逮捕。更に翌年自宅に覚醒剤などを所持していたとしてまた逮捕、と全く懲りない御仁で、結局5年以上もの懲役刑をくらうことになった。
普通の人間であればもう結構な年齢だし、ここらでおとなしく人生の終焉を迎えてもおかしくないが、彼は違った。この一連の
逮捕劇中にも、経営していた会社が倒産し破産を宣告されたにも関わらずヤマトの諸々の権利を巡って東北新社などと延々と裁判闘争を展開。結局約10年以上の裁判に勝利し版権関係を取り戻した結果、今回のヤマト復活となったのだ。つまりヤマトの復活は西崎義展自身の復活劇だともいえる。
残念なことに私が16工場に入所した時に丁度彼が出所してしまったので話は出来なかった。もし一緒になれば絶対ヤマト話に
花を咲かせただろうし、もしかして今回の復活編の仕事に絡めたかもしれないと思うと少し惜しい気もするが、所内での彼の評判は
娑婆と全く同様、散々なものだった。
これまで見てきたとおりの異常ともいえる生命力・闘争力の持ち主だから、恐ろしいほど自分勝手で周囲とは全く協調性がなく、
ほぼ毎日揉め事ばかり起こしていたと同僚用務者から聞いた。食事時に机を拭くふきんで自分の顔を拭き、そのまま机に戻したことで
周囲の受刑者と大げんかになったこともあったという。要するに、もう完全な鼻つまみ者であったらしい。
出所僅か二年でヤマトを復活させたその執念には恐れ入るばかりだが、肝心の作品はお世辞にも面白いとは云えなかった。
仲違いした松本零士を外したことでメカニカルデザインが妙に安っぽくなり、CGを使ってかえって線が細くなりすぎて逆に迫力が全くなくなる有様。音楽も何故か宮川泰のメロディーを殆ど使わず、何の関係もないクラシックの名曲を何度も挿入していて意図が全く伝わってこない。
更に、脚本に何故か石原慎太郎が参加したらしく、異様に右かかった安易なヒロイズムを声高に訴えて薄っぺらい。更にハリウッド映画も裸足で逃げ出すほどのご都合主義的エンディング、更になんと次作を暗示させるテロップに至っては、観客からブーイングが起こる程で、意味不明のアルフィーの歌とあいまって極めて観賞後の後味の極めて悪い作品となってしまった。オールドファンとしては、もう西崎氏には引退してもらって、新しい制作者で「まともな」ヤマトをつくって欲しいと願うのみだ。
同じ出所者としては西崎氏の復活を非常に嬉しく思う反面、あれだけの罪を犯した人がヤマトのパンフレットに「愛のために戦え」とか「地球環境を守ろう」としたり顔で堂々とコメントを載せているのにはなんともしらける思いがする。彼の黒羽での評判を聞く限りでは、彼が自分の罪を反省していたとはとても思えないからだ。そのコメントを全国の少年少女が読んでどう思うのか。まぁ少なくとも私の11歳になる息子は「ひどい作品だったね!」と切り捨てていたが・・・いやはや。
もしかすると今回の映画、星間国家連合と不屈の闘いを展開するヤマトには、社会や裁判所と戦い続けた西崎氏自身の姿を投影されている?なんて悪い冗談ですよね、西崎さん。
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