本間 龍のブログ

原発プロパガンダとメディアコントロールを中心に、マスメディアの様々な問題を明らかにします。

現場の刑務官の質は高かった

ここまで司法行政については結構辛口の文章ばかりだったが、私はこのブログで官側の全てを否定しようと思っているわけではない。そもそも彼らの世話になった原因は自分にあるのだし、一生そのお世話にならない国民の方が圧倒的に多いのだ。恨み辛みを書いているブログは他に多数あるし、自分の性格にも合わない。ここでは全て、是々非々で語っていきたいと考えている。

 とはいえこの辺りで少し司法側を持ち上げないとつり合いが取れない(?)とも思うので、一つそういうお話を。



 約2年の拘留生活の思い出は山ほどあるが、中でも非常に印象に残っているのは、実は拘置所刑務所で出会った刑務官の質がおしなべて大変高かったことであった。



 刑務所が舞台の漫画や小説では、登場する受刑者以上に悪者扱いされることが多いのが刑務官である。法務省からのキャリア組は僅かで、各地の刑務所に勤める刑務官はみなし公務員であり、地元の人々、農家の次男・三男坊が非常に多い。薄給で過酷な労働現場、しかも相手はゴロツキばかりなので彼らまで性根が悪くなってくる、という感じで描かれていることが結構多い。だから私も入所の頃はどれだけ質が低いのか見てやろう、と意地悪な気持ちでいた。

 ところが意に反して(?)私が体験した限りにおいては、おしなべて彼らの質は高かった。東京拘置所のフロア責任者も公明正大で信頼がおける人だったが、なんといっても黒羽刑務所での16工場長、K部長は人格者だった。16工場は普通工場では作業できない高齢者、精神障害者身体障害者等を集めた工場だが、K部長は一人一人の状態をよく把握し、困難な現場の中で最大限、各人の面倒を見ようと気を配っていた。

 ム所における刑務官は受刑者から見れば絶対君主のような存在である。彼らの意に反すればヅケが悪くなって(査定が悪くなって)仮釈放が遠のくばかりか、下手をすると些細なことで難癖をつけられ、懲罰房に叩き込まれかねないから、彼らの命令は絶対なのだ。

 だからいかに相手が理解の遅い認知症の老人でも、無理矢理命令を下すことが出来るわけだが、K部長は絶対にそれをしなかった。常に私たち用務者に意見を求め、何かの問題を起こしている相手に対して私たちが強権の発動を求めても、「まあ待て、もう少し様子を見よう」という人であった。

 それでいてそれは単に責任回避ではなく、実に絶妙なタイミングの計り方だったのだ。「A爺さんは今日食欲があったか」「Bは元気がないようだが何かあったか」「Cは誰と仲がいいのか、悪いのか」等々、単なる監視ではなく、各人の実情を知ろうと努力をしていた姿には、頭が下がる思いがした。

 他にも、若い刑務官達は皆純粋で職務遂行に懸命であり、依怙贔屓などせず実に気持ちの良い人が多かった。もちろんこれは過去に名古屋事件などで刑務官が受刑者に暴行を加えて死亡させたことで批判が高まり、刑務官達に対する教育が徹底され、刑務官の自制心が強くなっていることも影響しているだろう。もちろん若干の例外はいたが、どこの組織にも問題児は多少はいるのだからあまり気にならなかった。

 なんだかんだ云われるが日本の公務員の多くは業務に忠実・まじめであり、それが日本の行政を支えている現実を、実に不思議な現場で再確認できた気がした。

 辛いム所生活が真っ暗にならなかったのは、良い仲間に恵まれたこともあるが、刑務官たちの公平な勤務態度によるところも大きい。もちろんこれは私個人の感想であることをお断りしておく。少し誉めすぎたかな。 
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「懲役」を知っていますか?―有罪判決がもたらすもの

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